3.そわそわ ページ5
昨日、あのコが渡してくれたハンカチ。
綺麗な白をオレが汚すの、なんか申し訳なくて使えなかった。
その日の昼休みに返そうと思って2年生の教室を覗こうとしたけど、不安そうなあのコの目が妙に忘れられなくてやめた。
大事に鞄にしまっておいたけどシワがついてて。姉ちゃんに教えてもらいながら洗濯して、アイロンとかかけたりして。
ちゃんと今日返すんだ。
(先輩、だよな)
今朝1年のクラスを回ったときにはそれっぽいコはいなかったし。
「リエーフ、次移動教室。先行ってるぞ」
声をかけてくれたクラスメイトに適当な返事をして教室を1つずつ覗き込む。
1組は……いない。
2組……にもいない。
そわそわ、綺麗にしたハンカチを大事に持って覗き込む。
3組……ここにもいない?
キョロキョロと中を見回すと見覚えのあるプリン頭が。
「……なに?」
この人は同じバレー部の先輩だ。
「えと、研磨さん!このハンカチ……」
真っ白なハンカチを見せて説明しようとしたその時、背中にとん、と何かがぶつかった。
(あ、ここ入り口!)
振り向きざまにすんません!と口にしかけて息をのむ。
こちらを見上げるまんまるの目。
昨日とおんなじだ。
オレより小さい人なんてたくさんいるのになぜだか妙に頭に残っていて。
『あの、もしかして……灰羽くん、って名前だよね』
「あ、そう!オレ、昨日貸してもらったハンカチ返しにきて!」
慌てて手に持っていたハンカチを差し出すと、そのコはぱっと、でも大人しそうな感じで笑った。
『洗濯してくれたんだ、ありがとう』
両手でハンカチをしっかりと受け取る彼女のしぐさが、なんか女の子って感じだ。
なんでかわかんないけど、ハンカチを渡して終わるのが嫌で。気づいたら口から出ていた。
「昼休み、もう1回会いに来ます!」
そのコはきょとんとした顔で何にも言わなかったけど、オレは構わずすぐに来た道を戻った。
移動教室じゃなきゃ、もう少し話せたのに。
そわそわ、はやる気持ちを抑えつけもせず。
そわそわ、ただあのコの顔だけを思い浮かべながら。
途中で廊下を走っていたことを昨日と同じ先生に怒られたけど、内容なんか耳に入ってこなかった。
(昼休みが楽しみだ!)
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えま - はい!読みます!! (4月6日 18時) (レス) @page33 id: c3dc1b262f (このIDを非表示/違反報告)
ボルシチ(プロフ) - えまさん» コメント嬉しいです…!ありがとうございます☺️ (4月6日 11時) (レス) id: f90a9b58f4 (このIDを非表示/違反報告)
えま - 完結おめでとうございます!とっても面白かったです!! (4月6日 9時) (レス) @page32 id: c3dc1b262f (このIDを非表示/違反報告)
ボルシチ(プロフ) - いもりさん» 素人の文にそう言って頂けて嬉しいです…!こちらこそありがとうございました🙏 (4月5日 22時) (レス) id: f90a9b58f4 (このIDを非表示/違反報告)
いもり - 完結おめでとうございます!!とってもドキドキしました(`・ω・´)こんないい作品書いて下さりありがとうございました! (4月5日 17時) (レス) @page32 id: 20a9a81cbb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ボルシチ | 作成日時:2024年3月22日 12時