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「Aさん、起きてください」

『ん……?』


彼の声がして目が覚めた。


いつのまにか眠ってしまっていたようで、辺りを見回すとさっきまでゲームをしていたメンバーはもういない。


いるのは、こっちを見つめる灰羽くんだけだ。


『わ、ご、ごめんね。起きるの待ってた?もう体育館しめるよね』

「いえ、大丈夫ですけど……でもここで眠ってたら風邪ひきますよ」

『うん、そうだね。ありがとう』



(あ、これってチャンスなんじゃ……)


「じゃあ、先いってますね」


そう思ったときには、彼はもう行こうとしていて。


『ま、まって……!』


慌てて裾を掴んで引き止める。


『もう、避けなくていいよ……避けないで』


彼は振り向かないけど、歩みは止まっている。


『私が悩んでたから距離とってくれたの、わかったけど……話せないのは、こわかったし寂しかった』

「すみません……」

『……聞いてくれる?』

「……はい」


そう言うと、ようやくこっちを向いてくれた。


『あのね、私ね……』


口に出そうとした、その瞬間。



ごろごろ。空から響く、大きな音。



『わっ……雷……』


思わずびくっと反応してしまう。


昔から雷の音が少し苦手だ。


「そういえば誰かが鳴るって言ってましたね……大丈夫ですか?」

『あ、うん……それでね、えっと』


立て続けに2つ、雷が鳴る。


何から言うか、待ってる間に考えていたことが飛んでしまって、急で拳を握りしめてしまう。


(このタイミングで雷、油断してた)


待たせてるのに。早くしないと。


ぐるぐる考えていると、ふと握っていた拳が彼の手によって緩められる。



「……ちゃんと、待ってますから。もう避けたりしません。だからゆっくりで大丈夫ですよ」



安心させるように包まれた手が、温度が。


こちらに目線を合わせるように屈んで耳を傾けてくれる彼が。



『……すき』



今日も、今までも何度もその手で助けてくれた。



『わたしも、灰羽くんが好き』



言葉にした次の瞬間、私は彼の腕の中にいた。



「……よかった〜〜〜!!!」

『わ、わ、灰羽くん』


灰羽くんの心臓の音が激しく鳴って、雷の音がかき消される。


ぎゅっと抱きしめられて、暑苦しいけど不思議と嫌じゃない。

.→←10.ごろごろ



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設定タグ:ハイキュー , 灰羽リエーフ , 音駒   
作品ジャンル:恋愛
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えま - はい!読みます!! (4月6日 18時) (レス) @page33 id: c3dc1b262f (このIDを非表示/違反報告)
ボルシチ(プロフ) - えまさん» コメント嬉しいです…!ありがとうございます☺️ (4月6日 11時) (レス) id: f90a9b58f4 (このIDを非表示/違反報告)
えま - 完結おめでとうございます!とっても面白かったです!! (4月6日 9時) (レス) @page32 id: c3dc1b262f (このIDを非表示/違反報告)
ボルシチ(プロフ) - いもりさん» 素人の文にそう言って頂けて嬉しいです…!こちらこそありがとうございました🙏 (4月5日 22時) (レス) id: f90a9b58f4 (このIDを非表示/違反報告)
いもり - 完結おめでとうございます!!とってもドキドキしました(`・ω・´)こんないい作品書いて下さりありがとうございました! (4月5日 17時) (レス) @page32 id: 20a9a81cbb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ボルシチ | 作成日時:2024年3月22日 12時

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