10.ごろごろ ページ25
夜久さんのお陰で決心がついたけど。
『あ、灰羽くん……』
体育館に戻ると、入り口付近で座り込んでいる灰羽くんを見つけた。
目が合うと彼は、おずおずとこちらの様子を伺いながら立ち上がる。
「……Aさんもう大丈夫、ですか」
『あ、うん。もう大丈夫だよ。心配かけてごめんね』
「そうですか、よかった」
ホッとしたように肩を落とす彼は、そのまま私に背を向けた。
『あのね、ちゃんと話さないといけないことが』
「あ、もうすぐ午後の練習始まりますよ!いきましょう」
『え、うん……そうだね!』
(あれ?)
今までは私がどう話せば良いのかわからなくなっていたから気づかなかったけど、もしかして。
『灰羽くん、ドリンクどうぞ』
「あぁ……ありがとうございます」
『灰羽くん、さっきのスパイクすごかったね』
「あざす……あ、次コート移動ですよ」
(絶対避けてる!)
「ちょっとちょっと、お昼なんかしたの?Aちゃんの顔険しいんだけど」
「なんもしてねぇよ。ほら次の試合だ」
もどかしさから眉間に皺が寄ってしまうけど、そんなことは今はいい。
(避けられるなら、待ち伏せしよう)
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(あ、いた。やっぱりここだ)
みんなが毎晩のように自主練してるのは知っていたから、体育館を覗き込むとやはりいた。
黒尾さんと灰羽くんがネットを挟んで梟谷の2人……それから烏野の小さい10番の子と、メガネの落ち着いた子も合わせて、3対3をしているみたいだ。
灰羽くんの待ち伏せついでに隅っこで座って眺める。
(わぁ、やっぱりすごく飛んでる)
身長はこの中で1番小さいのに、それをもろともしない高いジャンプに感心する。
たしか烏野高校とはゴミ捨て場の決戦、なんて因縁があると聞いたことがあった。
(予選で勝ち上がったら、春高で戦うかもしれないんだよね)
なんてことを考えながら、眠い目を擦る。
(午前も思ったけど、梟谷の人すごいパワーだ)
地面に叩きつけられるボールの音が凄まじい。
スパイクもブロックもきっとどれもすごいものなんだとはわかっているけど、やっぱり目線は銀色の毛並みをとらえてしまう。
彼が飛ぶたびに揺れる銀色。
ボールを弾く大きな手のひら。
今ならちゃんと言えるよ。
(もう答えられるから、避けないで)
はやく、彼に伝えたい。
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えま - はい!読みます!! (4月6日 18時) (レス) @page33 id: c3dc1b262f (このIDを非表示/違反報告)
ボルシチ(プロフ) - えまさん» コメント嬉しいです…!ありがとうございます☺️ (4月6日 11時) (レス) id: f90a9b58f4 (このIDを非表示/違反報告)
えま - 完結おめでとうございます!とっても面白かったです!! (4月6日 9時) (レス) @page32 id: c3dc1b262f (このIDを非表示/違反報告)
ボルシチ(プロフ) - いもりさん» 素人の文にそう言って頂けて嬉しいです…!こちらこそありがとうございました🙏 (4月5日 22時) (レス) id: f90a9b58f4 (このIDを非表示/違反報告)
いもり - 完結おめでとうございます!!とってもドキドキしました(`・ω・´)こんないい作品書いて下さりありがとうございました! (4月5日 17時) (レス) @page32 id: 20a9a81cbb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ボルシチ | 作成日時:2024年3月22日 12時