9.くらくら ページ21
あれから灰羽くんに自分の気持ちを伝えられないまま、夏休みの合宿が始まった。
あの日私が「わからない」と言ってしまった後、彼は少し笑って、私を家まで届けてくれた。
私も彼のことが好きなのに、そのことを口にしようとするたびに息が詰まって言葉が出てこない。
(きっと、呆れられてしまったかも……)
彼はちゃんと言葉にして伝えてくれたのに。
「1週間の合宿頑張りましょうね、Aさん」
後ろから聞こえた声に、一瞬びくりとしてしまう。
『あ、うん……灰羽くんや、みんなのサポートしっかりやるね』
目を見れないままそう答えると、彼はこう続ける。
「…………あの。無理、しなくていいですからね」
『え、？』
驚いて今日初めて正面から見た彼の顔は、ニッコリと落ち着いた笑顔でこちらをみていて。
「オレは……Aさんに好きって伝えられてよかったって思ってるから……だから、無理に答えを出そうとしなくても大丈夫ですよ」
そう言って体育館に入っていく彼は、いつものように意気込んでこれから始まる練習試合の準備を始めた。
何か言わなければいけないことがあるはずなのに声を上げるのが少しこわくて。
他校のマネージャーさんに声をかけられ、その日はそれ以上彼と話すことはなかった。
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あの日から、Aさんはずっと何か考え込んでる。
……何かって、もちろん検討はつくけど。
きっとオレが突然キスなんかして告白したから戸惑ってるんだ。
気持ちを伝えたことに後悔なんてない。
だけど、そのことでAさんが思い詰めてるのは嫌だ。
答えなんか聞かなくたって、オレがAのことを好きなのは変わらないから。
「…無理に答えを出そうとしなくても、大丈夫ですよ」
今日初めてオレを見上げてくれたまんまるの目は、まだ不安げに揺れていたけど。
安心して欲しくて作った笑顔は、彼女にバレていないだろうか。
大丈夫って、思えたかな。
そんなことを考えながら、オレはこれから始まる試合のために準備を始めていた。
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えま - はい！読みます！！ (4月6日 18時) (
レス) @page33 id: c3dc1b262f (このIDを非表示/違反報告)
ボルシチ(プロフ) - えまさん» コメント嬉しいです…！ありがとうございます☺️ (4月6日 11時) (レス) id: f90a9b58f4 (このIDを非表示/違反報告)
えま - 完結おめでとうございます!とっても面白かったです!! (4月6日 9時) (レス) @page32 id: c3dc1b262f (このIDを非表示/違反報告)
ボルシチ(プロフ) - いもりさん» 素人の文にそう言って頂けて嬉しいです…！こちらこそありがとうございました🙏 (4月5日 22時) (レス) id: f90a9b58f4 (このIDを非表示/違反報告)
いもり - 完結おめでとうございます！！とってもドキドキしました(｀･ω･´)こんないい作品書いて下さりありがとうございました！ (4月5日 17時) (レス) @page32 id: 20a9a81cbb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ボルシチ | 作成日時：2024年3月22日 12時
