検索窓
今日:17 hit、昨日:47 hit、合計:9,606 hit

. ページ20

「デートです」

『……え』

「オレはAさんを、デートに誘ったんですよ」


暗くて表情が読めないけれど、話し始めた声色はいつもより低く、なんだか落ち着かない。


『そんなの、ウソ……』

「毎日会いにいくのも、あの夜甘えたのも、好きだからだ」


「オレは……今日、あんたの後輩としてここにいるわけじゃない」


「Aさんのことが、好きでここにいる」



きゅっ、と一瞬強く握られた手が、その言葉を最後に離れていく。



「本当に気づいてなかったんなら、警戒心なさすぎです」


ぱちぱちと心の中で何かが弾けて。


『そんなこと……』


上手く、言い返せなかった。


「…………もう遅いし、家まで送ります」

『……いいよ、別に』

「……心配なので」

『…………うん』


ただの後輩だと、彼からうっすらと感じる好意を見ないフリをしていたのかもしれない。


自分の、彼への気持ちのことも。


燃えかすを片付けたあと、彼から差し出された手。


故意に、繋ごうとするのは初めてだ。


迷いを持って持ち上げた手に、彼はすかさず指を絡める。


彼からは好きと言われたけど、私はまだこの気持ちを口にしていない。


なのに彼は私の気持ちを私より先に知っていたみたいに、手を引いてくれる。


『……いきなり、キスは……嫌だよ』

「う……スンマセン…………順番、間違えました」

『……順番?』


彼の足が止まって、こちらに向き直る。


「……Aさん」

『あ……』

「付き合って、もらえませんか」


街灯の明かりに照らされた、あからさまに赤い顔を見て欲しくなくてそっぽ向いたのに。


「Aさんは、どうですか」


する、と指でなぞるように私の顎に指を添えた彼は、熱のこもった視線を合わせてくる。


『わ、私……は……』


好きだって、自覚してる……けど。


そうこう考えているうちにまた彼の顔は近づいていて、今度はおでこ同士がこつん、と触れる。


『……また、するの』

「……答え次第、ですけど」


いつもは子供っぽい彼でも、今日は年下だとは思えないくらい大人な表情で。


細くなった目で見つめられて、息ができない。


『……わ、わかんない……』


顔から火が出そうで涙が出そうになって、そう答えてしまう。


ピタリと動きを止めて、彼は素直に離れていく。


「……いきましょう、もう遅くなっちゃいますから」


(灰羽くんのことが好き、なのに)



誤魔化して、しまった。

9.くらくら→←8.ぱちぱち



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (31 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
80人がお気に入り
設定タグ:ハイキュー , 灰羽リエーフ , 音駒   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

えま - はい!読みます!! (4月6日 18時) (レス) @page33 id: c3dc1b262f (このIDを非表示/違反報告)
ボルシチ(プロフ) - えまさん» コメント嬉しいです…!ありがとうございます☺️ (4月6日 11時) (レス) id: f90a9b58f4 (このIDを非表示/違反報告)
えま - 完結おめでとうございます!とっても面白かったです!! (4月6日 9時) (レス) @page32 id: c3dc1b262f (このIDを非表示/違反報告)
ボルシチ(プロフ) - いもりさん» 素人の文にそう言って頂けて嬉しいです…!こちらこそありがとうございました🙏 (4月5日 22時) (レス) id: f90a9b58f4 (このIDを非表示/違反報告)
いもり - 完結おめでとうございます!!とってもドキドキしました(`・ω・´)こんないい作品書いて下さりありがとうございました! (4月5日 17時) (レス) @page32 id: 20a9a81cbb (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ボルシチ | 作成日時:2024年3月22日 12時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。