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8.ぱちぱち ページ19

『わぁ……久しぶりだな』


2日間の合宿も無事終って、数日後。


あの夜の約束通り2人で待ち合わせをしてコンビニで花火を買った。


花火の光で持っていろんな文字を書く灰羽くんを写真にとったり、2人で変わった花火を試したり。


『あつ……!』


線香花火のぱちぱちと散る火花が、私の注意を散漫とさせたのかもしれない。


火花が手に当たって、声を上げてしまった。


「大丈夫ですか?手……火傷とかしてたら大変だ」

『あ、大丈夫だよ。一瞬びっくりしただけで、あんまり熱くなかったし……』


咄嗟に私の手を取った彼は、まだ心配そうな顔をしている。


花火以外の光源はなくて、見えづらたからそんな気がするだけだけど。


「跡とか、残ってないですよね」



真っ暗な中火花のおかげでやっと見える、隣り合ったお互いの輪郭と、彼の優しい手つきのせいだ。



大胆なことを言いたくなったのは。



『……デートみたいで、浮かれてたのかも』



思わずそう口走る。


冗談っぽく笑ったけど、やっぱり恥ずかしい。


自分で言った癖に彼の顔が見られなくなって、思わず視点を下に落とした。


夏でも少し冷たい夜風が熱を持った頬をなでる。


長いような、短いような沈黙の中。


遠くで車が走る音。何かの虫の鳴き声。


お互いの衣擦れの音だけが聞こえる状況に耐えられなくなって、沈黙を破った。


『ご、ごめんね……あはは……変だよね。灰羽くんは、そんなつもりなんてないのにね』


彼はまだ沈黙の中だ。


いつの間にかじんわりとした明かりも地面に落ちて、何も見えなくなる。


(ここから、逃げたい)


そう、立ちあがろうと手をついた時。


『え……あれ……?』


彼の手が私の手に覆い被さって動けなくなる。


しっかりと重ねられた彼の手がまるで、どこにも行かないで、と言っているみたいだ。


そんなのは、私の、妄想のはずなのに。


寄り添った肩が触れ合う。


暗闇の中、突然頬に添えられられた手にぞくりと身じろぎをした。


『灰羽、くん……?』


彼の前髪が顔にかかって目を瞑った、その瞬間。



……唇に押し付けられる柔らかい感触。



それがなんなのか理解するのに時間がかかったけど。



少し離れた彼の吐息を感じて、思わず目を開く。


________ぱちぱち。


ゆっくりと瞬きをする、どこかの光を反射した灰羽くんのまっすぐな目をみて、確信してしまう。



(キス、された……?)

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設定タグ:ハイキュー , 灰羽リエーフ , 音駒   
作品ジャンル:恋愛
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えま - はい!読みます!! (4月6日 18時) (レス) @page33 id: c3dc1b262f (このIDを非表示/違反報告)
ボルシチ(プロフ) - えまさん» コメント嬉しいです…!ありがとうございます☺️ (4月6日 11時) (レス) id: f90a9b58f4 (このIDを非表示/違反報告)
えま - 完結おめでとうございます!とっても面白かったです!! (4月6日 9時) (レス) @page32 id: c3dc1b262f (このIDを非表示/違反報告)
ボルシチ(プロフ) - いもりさん» 素人の文にそう言って頂けて嬉しいです…!こちらこそありがとうございました🙏 (4月5日 22時) (レス) id: f90a9b58f4 (このIDを非表示/違反報告)
いもり - 完結おめでとうございます!!とってもドキドキしました(`・ω・´)こんないい作品書いて下さりありがとうございました! (4月5日 17時) (レス) @page32 id: 20a9a81cbb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ボルシチ | 作成日時:2024年3月22日 12時

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