5.しとしと ページ11
やってしまった。
あの日はどうしてもあのコを夜久さんから引き離したくて、無理に相合い傘なんてしてしまった。
オレの傘に入れたとき、Aさんは明らかに不安そうな顔してたのに、家まで送ったらまた笑ってくれた。
でもまだちょっと仲良くなったくらいなのにあんなことして、独占欲?とか出しまくってたし、前みたいに話してくれなくなったら、どうしよう。
(……とりあえず、今日もメシ!)
そう意気込んで2年の教室に向かうと、廊下にAさんと研磨さんの姿が。
「あれ、研磨さん廊下にでてる!珍しいっスね!」
「リエーフうるさい……今それどころじゃないから」
相変わらずテンションの低い研磨さんから、Aさんの方へと目を移した。
なんだかいつもより顔が赤くて、ぼーっとしてるような気がする。
「……Aさん?どうしたんですか?もしかして、体調とか……」
『大丈夫……だよ』
「ウソ。朝からキツそうだったし……早く保健室行きなって言ってるのに」
フラフラしながら立っているAさんは、今にも倒れてしまいそうなくらいで、なんだかいつもより一層小さく感じる。
「……オレ、Aさん保健室に連れて行きます!任せて下さい!」
「うん……じゃあ、おねがい」
「ほら、歩けますか?」
そう言って手を差し出したら、きゅ、と熱くなった手を上に乗せてくれた。
(昨日も思ったけど、手ちっちゃい)
ゆっくり歩きだすAさんがこけないよう肩にも手を添えて見守りながら、2年の教室をあとにする。
自分より細くて、薄い体。制服の布越しにもAさんの体温が高いのがわかった。
(昨日は元気そうだったし、帰ってから熱出たのかな……)
「大丈夫……じゃないですよね。オレ、運びましょうか……?」
『……それは、イヤ』
(ですよね)
なんとか保健室まで辿り着き、Aさんをベッドに座らせた。
「先生いないな……とりあえず体温!」
机から適当に取った体温計を渡すとすぐ制服のボタンを外し始めるから、ドキッとして後ろを向く。
待っている間に廊下も見てみたけど、まだ先生は帰ってこなさそうだ。
『熱、測れた……』
「うわ、結構高い……よくお昼まで頑張りましたね」
『ん……大丈夫だとおもったの』
ちょっと呂律が回らなくて子供っぽい喋り方のAさんは、正直かわいい。
_____しとしと。
湿度の高い室内で、2人きりだった。
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えま - はい!読みます!! (4月6日 18時) (レス) @page33 id: c3dc1b262f (このIDを非表示/違反報告)
ボルシチ(プロフ) - えまさん» コメント嬉しいです…!ありがとうございます☺️ (4月6日 11時) (レス) id: f90a9b58f4 (このIDを非表示/違反報告)
えま - 完結おめでとうございます!とっても面白かったです!! (4月6日 9時) (レス) @page32 id: c3dc1b262f (このIDを非表示/違反報告)
ボルシチ(プロフ) - いもりさん» 素人の文にそう言って頂けて嬉しいです…!こちらこそありがとうございました🙏 (4月5日 22時) (レス) id: f90a9b58f4 (このIDを非表示/違反報告)
いもり - 完結おめでとうございます!!とってもドキドキしました(`・ω・´)こんないい作品書いて下さりありがとうございました! (4月5日 17時) (レス) @page32 id: 20a9a81cbb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ボルシチ | 作成日時:2024年3月22日 12時