【クリュアペ】祈りは通ぜぬ【CS】 (ページ7)

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その後に産まれた弟であるハロルドにも、当たり前のように兄のような優秀さを親族から求められていた。……結果としては、見れどやれど何もできない出来損ないが産まれてしまったのだが。
周囲は不出来なハロルドに憐れみを持ち、親戚はそれに激しく羞恥した。その腹いせと言わんばかりに、ハロルドは幼少の頃から必要最低限の生活以上の関与をされず、まるで自分の息子ではないと言わんばかりに放置されたまま育ってきた。不必要な存在。ハロルドはそう見解したし、実際に家ではそのような扱いを受けてきた。とはいえ食事は同じものを与えられたし、服も与えられたし、家の手伝いもしたし、風呂に入れなかったわけでもない。けれど確かに、兄が両親に愛されている日々のなかで、ハロルドは不必要だった。
ハロルドはそのことに疑問こそ抱いたものの、問う先を知らなかった。当時心優しかった少年は全て自分のなかに押し込めて、自分だけでどうにかするしか術を知らなかった。

そんな中、父に殺されそうになったことがある。その年は天候不良により収穫が少なく、いつもよりスカスカの食料倉庫に呼び出された。不作による金銭の負担を軽減するために、ハロルドを殺そうと考えたのだろう。ハロルドを倉庫の奥まで押し込んだ後、扉を父が閉めるやいなや、いきなり目の前でナイフが振りかざされる。しかしそれはハロルドに刺さる前に停止した。次に父が呟く、「なんでナイフを持っているんだ？」と。このとき、初めて根源魔法を行使したのだ。
不思議そうに首を傾げたまま、父は倉庫から出ようとする。それに安堵したのも束の間、父は鍵を取り出した。まずい、とようやく察知した──このままでは、倉庫に閉じ込められてしまう！
ハロルドは大声を出して父を引き留めようとした、けれど父は気にしもしない。どうしようどうしようと慌てる彼に、不意にナイフが目に入った。……そうだ、自分の姿が見えないだけなら。そう思い付き、そのナイフで自身の指を切った後にその血を壁へと付けた。ぺしゃ、と小さく音が倉庫内に響き、ハロルドはこれで気付いてくれると……そう考えた。
しかし傍から見れば、どこからともなく壁に血が塗られることになる。その光景を見た父は「幽霊だ」「この家には幽霊がいる」と騒ぎ立てたのだ。錯乱のなかどうにか鍵を閉め、倉庫から離れていった。

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