蜂楽 廻の可愛がり日記。2

ケンカ ページ15

『ねぇ、めぐ』

「ん〜？」

『もし、めぐとわたしがケンカしたら、どんな感じかな？』


Aが、珍しくちょっと悲しそうに聞いてきた。
ケンカ…、昨日見た双子が主人公の映画の影響でも受けたかな？
その映画は、双子がケンカしたまま離れ離れになる。
いわゆるバッドエンドだったから。

部屋の隅っこでしょぼくれてるAのとなりに座って、Aの頭を撫でた。


『……けんか、したことない。
でも、もししたら、あんな風にずっと口聞かないでそっぽ向き合って、離れ離れになるかな…？』


俺とAはケンカしたことない。
でも、俺もAもケンカがどんなものなのかは知ってる。
Aは何度も見てきたし、俺は実際に何回もしてたし。
だから、Aは怖いんだ。


「どうだろう…？
俺的にはケンカしてもパッと仲直り出来ると思うけど」


どれだけの信頼があっても、
どれだけの愛情があっても、
一度亀裂が入ってしまったら、簡単に粉々に割れる。


「怖い？」

『え…？』

「俺とケンカしたり、ケンカの元になるかもって考えて言いたいこと言ったりするの、怖い？」

『……ケンカは嫌だ。いい事ないもん。
でも、別に怖くない。だって、めぐは何でも受け入れてくれるもん。変なこと言っても笑ってくれるでしょ？
だから、めぐなら怖くない』

「だよね♪
俺も同じ。Aには何だって言える。怖くない。
だから、俺らは大丈夫。
だって、あの映画の双子と俺らには決定的な違いがあるし♪」

『ちがい？』


あの映画の双子はなんて言うか、お互いに素直じゃないタイプというか、お互いを知ろうとしてない感じだった。
だから、俺らと真逆。


「あの映画の双子はお互いの気持ちをちゃんと言ってないじゃん。
でも俺らは何だって言うでしょ？そこだよ」

『…あ。』

「ね！だから俺らは大丈夫♪
相手を知ろうとすることを、俺らはして来たでしょ？だから、俺もAも、口にしなくても分かること、何個もある！
そこがあの双子とのちがいで、俺が大丈夫って言い切れる理由♪」


Aの頭を撫で回しながら言えば、しょぼくれてた顔が元気になった。


「ほら、おいで〜♪」


おいでって腕を広げたら、Aは当たり前のようにニコニコしながら飛び込んでくる。


「にゃは♪
Aの甘えんぼさ〜ん♪」

『…めぐぅ〜』

「…可愛い子♪」



さっきまで不安だったぶんベッタリくっついて離れない。
だから俺もいっぱいぎゅーって抱きしめる。

俺らはこれでいい♪

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