ずるい ページ5
安心感で緩みきったAちゃんはそれはもう可愛いの一言に尽きるほど可愛かった。
ついさっきまで強ばってた表情も、とろけてふにゃふにゃになっている。
初めて出会ったときの、可愛らしい面影が今も残ってる。
この表情を見るに、やっぱりいつも怖がっていたんだと思い知る。
『……いず………だ、……き……』
「…え？何？なんて言ったの？」
すりすり甘えてきながら何か呟いていたけど、Aちゃんの声が小さくて聞き取れなかった。
聞き返しても返事はなく、僕の首に腕をまわして抱きついて甘えてくるだけ。
……お酒、全然のんでないのにこのとろけっぷり、
「……反動が大きいのかな？」
仕事の疲れもあるだろうし、家にいても外にいても疲れることだらけなら、それも有り得るのかな？
なんて考えていたら、お風呂が沸いた。
「Aちゃん、先にお風呂入っていいよ」
『…お風呂……あ、でも着替えとか何も……』
「あ……。あ、でも、服なら僕のでよかったら準備するよ！」
『…じゃあ、おねがいします』
「うん！」
……、今のとろけきったAちゃんなら、話してくれるんじゃないか？
いや、でももう2人とも大人だ。
お風呂まで一緒なんて、幼馴染みとはいえ、まだ恋人にもなっていないじゃないか
けど、ここで聞いておかないと動けない。
何かあるのは明白なのに、動けずにいるのは嫌だ
そんなことを考えながら、チラッと僕があげたリボンをほどいていたAちゃんを見た。
すると、リボンをほどく動作で服が首元をかすめて、塗っていたファンデーションが落ち、生々しい傷が見えた。
「……っ」
見た感じ、1箇所に古い傷と真新しい傷が重なってある。
ということは、傷も治らないうちに傷をつけられたということになる。
「Aちゃん、」
『なに？』
「アフターサービスって、ただのお泊まりじゃないんだよ」
『え…？』
今は、"アフターサービス"って言葉を存分に使おう。
その言葉を言ってしまえば、Aちゃんは仕事であることを思い出す。
それに、そもそもAちゃんははっきりNOが言えない。
そんなAちゃんの弱い部分も利用して。
「いっぱいサービスしてね？」
そして、このままAちゃんの保護に移ろう。
もう、1日も置いちゃダメだ。
Aちゃん、ずるいことしてごめんね。
でも絶対、助けてあげるから
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作者名：どやちゃん | 作成日時：2024年2月11日 21時
