今日からプロヒーローに飼われます。 (ページ38)

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かわいいおんなのこページ38

Aちゃんを異性として意識したのは小学生の頃。高学年になってすぐくらいの頃だった。

幼馴染みに恋愛感情を抱く。
そんなコミックのようなことが自分に起こるなんて思いもしなかった。

低学年の頃は僕よりも背が高かったAちゃんの背をある日僕は越した。

『…あ、』

「え？」

『いずくくんのほうがおっきくなっちゃった…』

「…っ！？そ、そうだね…！なんか不思議な感じだ…」

まっすぐ見上げられたとき、言いようもうない感情が湧きあがった。
こんなに可愛かったか？なんて思いながら、Aちゃんへの返事もたどたどしくなってしまったりもした。
…まぁ、要は、Aちゃんの上目遣いに瞬殺されたわけで。

『でも、いずくくんはおっきくなってもかわいいね』

「か、かわいいとか、男に言う言葉じゃ…！！」

『…ふふっ、かわいいね、かわいいね』

「Aちゃん！！！」

こうやってからかわれるのも嫌いじゃなくて。

中学生になってかっちゃんからのいじめもますますエスカレートしていった。

『だめだよ、かつきくん』

「あァ？」

「Aちゃ…！！い、いいよ！」

『仲良くしなよ』

「だァれがこんな無個性と仲良くなンざするかァ」

『…個性なんてどうでもいいよ』

Aちゃんは、かっちゃんがボロボロにした僕のヒーローノートをテープで直してくれながらかっちゃんを止めてくれた。
今思えば、Aちゃんの"個性なんてどうでもいい"発言が酷く痛々しく響く。

『いずくくんは無個性だけど、いつもわたしを楽しませてくれる、幸せにしてくれる
それってもうヒーローでしょ？
かつきくんは確かに優秀だしヒーローになれると思うけど、いずくくんもヒーローになれるよ』

この言葉に、僕はどれだけ救われたか。
Aちゃんだけは、僕をヒーローだと言ってくれたのが嬉しかった。
Aちゃんがヒーローや個性に対して嫌悪感とまではいかないまでも、よく思っていないことはこの頃の僕も薄々感ずいてはいたから、そんなAちゃんにそう言ってもらえたことも嬉しかった。

Aちゃんは、いつも僕を助けてくれる。

「え…」

中学2年の夏、Aちゃんが転校したと先生から伝えられた。
いろいろ思うことはあった。
一言くらいあってもよかったんじゃないか、とか。
でも僕はいつか会えることを信じて、Aちゃんが言ってくれたたくさんの言葉を胸に、ヒーローになろうと思った。