ご褒美 ページ16
ヴィランが同時に襲ってきたか、とも思ったけど、
Aちゃんがさらわれてから、ナイフが飛んでくることはなくなった。
つまり、Aちゃんは無数のナイフを四方八方から飛ばしてきていた奴といる。
そして敵はそいつ一人。
「どこだ…」
どこを探しても見当たらない。
念の為、市民を避難させつつAちゃんと敵を探す。
ﾊﾟﾁﾝｯ
「…！Aちゃん！」
突然、パチンッという音が頭の中で響いた。
これは、Aちゃんの個性、転送だ。
Aちゃんの転送は、Aちゃんのフィンガースナップをトリガーに発動し、転送対象者のみにパチンッという音が響くように聞こえる。
僕の頭の中で響いたということは、転送する合図。
「Aちゃん…！！」
正直、Aちゃんは怖さで動けなくなると思ってた。
だから、もしヴィランと遭遇しても僕が一人で何とかしようと思ってた。
だけど、違った。
Aちゃんは、ちゃんと、ヒーローしてた。
転送し終わったのか視界に広がる景色が変わり、目の前には僕らを狙っていたヴィランがいた。
向こうは僕に気づいていない。
なるなら今だ。
「スマァッシュ！！！」
見事に命中してヴィランが吹き飛んでいるうちにAちゃんを探す。
「Aちゃん！！」
『……ぅ』
針金できつく縛られて呼吸出来なくなっているAちゃんを見つけた。
手も、縛られて血が止まり、変色している。
「こんな手でよく…」
きつく縛られていたため、ほどくのに時間がかかったが、なんとかほどくことが出来た。
『……っ』
「Aちゃん、大丈夫？」
『…い、いず…あ、でく、くん……』
「…、いい子だね」
自分で言ってて忘れてた。
ヒーロー名で呼ぶこと。
「…っと。
ヴィラン、確保完了！」
Aちゃんを抱きあげていたら、吹っ飛ばされていたヴィランが動き出したので、黒鞭で縛り上げて確保した。
その後は、警察の方々に任せ、Aちゃんを事務所の医務室へ運んだ。
「なんともなくてよかった」
『…うん』
「Aちゃん、」
『…ん？……んっ』
「ご褒美だよ」
よく頑張ったね。
ご褒美と称して、何度もAちゃんにキスした。
そしたらAちゃんが首に腕を回して応えてくれるから、医務室のベッドに押し倒して何度もご褒美をあげた。
『……いずくくん、』
「うん。
まだいっぱい、ご褒美あげるよ」
こうして、Aちゃんのインターン初日は終了した。
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作者名：どやちゃん | 作成日時：2024年2月11日 21時
