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「へぇ〜Aちゃんは受験生なんだ。そりゃ家に帰りたくもなくなるよな。ん、これ美味い…ほれ、口開けてみ」


さっきまで1人で座っていたベンチに、今度は2人で座ってお菓子を食べながら当たり障りないことを喋っていた。

見ず知らずの人とお菓子を食べながら喋るなんて、あまりよろしくないことなのではないかと思ってしまうが、今この状況に心地良さを感じる自分がいて勢いに任せてしまった。

ちなみに、お兄さんは20歳で名前は成瀬さんらしい。本人の希望でお兄さんと呼ぶことになった。

漫画でよく見る近所のお兄さんというやつは、こんな感じなのだろうか。


「ん、美味しい…お兄さんは何の仕事してるの?」


口に入れられたスナック菓子を噛み砕きながら、そんな事を聞いてみた。すると、お兄さんは「んー…」と口を動かしながら上を向いた。

つられて上を向くと、真っ暗な闇夜が広がっていた。ここの公園は都心から少しだけしか離れてないということもあり、星はひとつも見えなかった。


「音楽関連の仕事ってことで」

「音楽!?自分で曲作ったりとかするの!?お兄さんってすごい人なの!?」


視線をお兄さんに戻し、食い入るように聞けばお兄さんはふはっと笑う。


「作詞とかはするけどすごい人じゃないよ。作曲はまだした事ないけど。にしてもその反応なに、めっちゃ目輝いてんじゃん」


くつくつと笑いながら、その大きな手で頭を乱雑に撫でられたが、すぐにその手は離された。

乱雑だけど優しくて、暖かくて、もっと撫でてほしいな、と思いながら乱れた髪を直した。





「やべっ、もうこんな時間じゃん。さすがに帰んなきゃだな」


しばらく喋った後、お兄さんはスマホを取り出してそう言った。

「そんな悲しそうな顔すんなって」と言いながら立ち上がり、今度は優しくて頭を撫でられる。そう言うお兄さんの顔は、何か思案しているようにみえた。


「Aちゃんさ、生きる意味を探したりしちゃうでしょ」

「えっ」


なんで知ってるの、と聞こうとすれば、お兄さんは私の前にしゃがみ込んだ。


「俺も考えてた時あるし、どことなく考えてるとこ似てるからね、俺たち」


会ったばかりだけど!と笑いながらそう言われ、似てるという言葉に少し安心感を抱き、自然と目頭が熱くなった。

ひとりじゃない、と言われているような気がした。

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作者名:作者一同 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2019年12月25日 9時

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