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缶を置いた勢いのままとんっと落ちた左手の薬指をするりと撫でる。
ぴく、と反応したきみは頭を上げて、アルコールで少し赤くなって潤んだ目を、僕に向けた。
そんなきみに問うのは狡いかな、と思いつつ、それでも僕はやめようとは思わない。
「ねえ、A。相川になる？」
「…っえ、ま、まふゆ…？」
気づいて。って強い瞳で見つめていると、目だけじゃなくて顔から身体から、ぶわって赤くなって。
理解したんだなって、一瞬でわかる。
僕は、きみも知ってるように心許ない仕事をしているけれど。それでも、きみ一人養えるくらいの余裕はとうにある。
これからどうなるかって不安よりも、きみを愛おしいと思う気持ちが上回ってしまったんだ。
どんなことがあっても、きっともうきみしか見えない。…きみしか、愛せない。
「どうする？…なる？僕のお嫁さん。」
真っ赤になって固まってしまったきみに、返事を急かすように話しかける。
きみは、なんていうんだろう。けれどまあ、あれかな。
「遅いっ…。遅いよ、ばか…。」
めちゃくちゃに頷きながら、きみはまた泣き笑いをする。…きみのその顔がツボだって話は、まだ多分したことないよね。
付き合い始めたときも、喧嘩したときだって。
ずっと、きみは愛おしい。
きみの綺麗な瞳を見つめると、だんだんその目が閉じられて。
用意していた指輪をさっき撫でた指に通して、顔を近づける。
赤ちゃんみたいって言ってたきみが好きじゃないきみの手も、ぶーぶー言いながら結局大事にしているお手入れを怠らない長い髪も。
きみの全部を独占したくて、それはずっと変わらない。
優しく口づけをすると、きみはふふって笑って。
これからだってずっと手を繋いで、ふたりで。
…できたらまたひとり、ふたりと増えたらいいなと、そう思う。
Fin.
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