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全然、怖くなかった。浮くというよりは昇る、というような感じが正しいのかもしれない。足に地べたが当たる感触はないのに、繋いだその手から不覚にも感じる安心感は心地よい。
通れないと思っていた、コンクリの狭い狭い隙間。
それを構成していたビルの屋上さえも見下ろすほどの、遥か遥か上空。
そこに広がっていたのは、―――駅前のイルミネーションなんかより、こっちの方が断然華やかだ。
青も赤も黄色もない。明暗に違いはあれどただひたすらに白い、しかしそれの何と豪華なこと。
満天の、星空。
いつもは見上げていたそれを、見下ろすことができる日が来るだなんて。
見知ったオリオン座。北斗七星。...あの星の名前は知らないけれど、光り方がとても綺麗だった。
あのチカチカしたLEDよりも、ずっと好きだ。
こんなにも近くにある。すっと心の中に入ってきて、ずっと隣にいてくれる。
「...別に、良いと思うけどね」
言葉を失った私の隣で、彼はそう言った。
「......何が、ですか?」
「贅沢なんかじゃないでしょ。
迷惑なんかじゃないでしょ。
駅前みたいに華やかじゃない、沢山の色があるわけでもない、たかが星を見ただけで。そんなにも楽しそうに、子供みたいな表情するんだったらさ」
「...........馬鹿にしてます?」
「そうじゃなくて。...ほら、今日クリスマスじゃん」
「この星空、俺からのプレゼント」
「...ほら、俺、今日サンタだから。今日だけは、この景色も空間も一つ一つの星さえも。
全部、Aのもんでいいよ」
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