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朝、目が覚めて視界に映るのはセンラの端正な顔立ち。
寝顔までもが美しくて、長い睫毛が伏せられていてそれも全て画になるというか何というか。
何かあった時のために、と同じベッドに寝ているのに、私が期待している「ナニカ」が起こる気配もなかった。
センラが危惧している何か、はどこのマフィアがいつ狙って来るか分からないからと言うことで同じベッドで寝ている。
「センラ、起きて、今日クリスマス」
「あぁ…?んん、もうちょっと」
「クリスマスだって!カップルなら起きて何かしてるでしょ!」
「ねむいぃ………かっぷるぅ…?」
「もういい知らない!」
カップル、だなんてどうせビジネスカップルだ。
腹を立てて、私はカーテンを思い切り開けて外を見る。
日光が入ってくることは無かったが、代わりに綺麗に落ちて行く雪が見えた。
一つ一つが綺麗で、その落ちては溶けて行く儚さが何とも言えないほどにまで美しかった。
ホワイトクリスマスだ。
雪が綺麗でも、中々起きようとしないセンラに対しての怒りは収まってはくれなかった。怒り、と言うより悲しいのだけれど。
腹いせに適当に冷蔵庫から食材や調味料、更にはお菓子を作るための材料も取り出す。
私のストレス発散は料理だから。
マフィアの幹部をしている人間は、大半が人を殺すことがストレス発散、だなんて物騒なことを言うけれど、私とセンラはもともと普通の人間なのだ。
だから、こうして普通に料理をすることが楽しいのだ。
「おはよう、怒った?」
後ろからギュ、と腕を回して抱き着いて来るセンラに思わずドキリ、と大きく心臓が跳ねる。
待って、それは、ずるい。
後ろを見ることなく、朝食の支度をするけれど、ドキドキと煩い心臓は鳴り止んでくれない。
そんなことをされては怒りも悲しみもどこかへと飛んで行ってしまうじゃないか。
「なあなあ、怒らせた?」
「……もう怒ってない。早くご飯食べる準備しよう?」
なら良かった、と朝食を食べようとテーブルに皿を並べるセンラを目を細めて見た。
少し、センラが幸せそうに笑っていたのが意外だった。
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