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え、と坂田を見ると坂田は真っ赤な顔で私をじっと見つめていた。
「これ、浦田のためにこんな可愛くしてんやろ。なんなん?ずるい。浦田ずるい。俺の方が好きやのに。ずっとずっと好きやのに!!」
え、は?何言って…
さっきの爆弾発言で何かが吹っ切れたのかパニックになる私をよそに、坂田はつっ、と私の唇に触れた。
「…前も言うたやん。赤い口紅似合わんって。Aはお世辞にも大人っぽい顔立ちじゃないねんからピンクの可愛らしいのが似合ってる」
ぐいっと親指の腹で私の唇を拭った。そして私に可愛いプレゼント包装された袋を手渡した。まだ脳内処理ができていない私を、坂田は焦れったそうにもう!と言うと、ガサゴソと袋を開けて中からピンクの…可愛らしい口紅を取り出した。
「Aは、こっちのが似合ってる…から、」
そう言って、彼は私の手にそっとそれを握らせた。私の手の中でキラキラと輝く淡いピンク色の口紅。そっと顔を上げ、坂田を視界に入れると真っ赤な顔で私を見て愛おしそうに笑う坂田が。その姿にきゅう、と胸が締め付けられるのを感じた。
「A好き、大好き」
そう言葉を紡いだ瞬間、ドクン、と胸が高鳴った。あぁ、もう。私はいつから坂田の表情や仕草や言葉で胸を躍らせてしまうようになったの…。好き、という何も飾っていない、ストレートな言葉に坂田らしさを感じた。
先程から何も言わない私に、坂田は不安気な表情でこちらを見つめる。そんな姿さえも愛おしいと感じてしまうのは…
「ねぇ、坂田」
あのね、私も、
「私も…ピンクの口紅が好き」
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