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クリスマス当日。
本当なら朝から俺の隣にはAがいて、少しのんびり家で過ごした後、ちょっと遠出をしてイルミネーションを見る予定だった。
今日、Aと一緒にやろうとしていたことを思い出してはため息がこぼれる。いったい俺は今日、何度ため息をこぼすことになるのだろうか。
「出かける準備でもするか」
Aが帰って来ないことを知った友人たちが一緒に遊ぼうと誘ってくれたため、今日はそいつらのところへ行くことになっている。クリスマスを1人寂しく過ごすことにならなくて少し安心した自分がいた。
☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆
いつものメンバーでゲームして、飯食って、騒いで。そんなこととをしていたらいつの間にか外は真っ暗になっていて。時計を見れば21時を過ぎようとしていた。
「わり、俺そろそろ帰るわ」
そう伝えると"気を付けて帰ってくださいね"と、玄関まで見送ってくれる友人たち。他のメンバーはまだ残って夜通し遊ぶらしい。そいつらに"さんきゅ"とだけ返して友人宅を出て、スマホを取り出して電話帳を開く。そして、Aに電話をかけようとしたところで、俺のスマホが着信を告げた。相手は、今まさに俺が電話しようと思っていたAで。
「もしもし!?」
『そんなに慌てなくてもいいのに』
慌てて通話をつなぐとくすくすと笑うAの楽しげな声が聞こえてきた。
「いや、まさかかかってくるとは思わねーじゃん」
『会えなくてもせめて声だけは聴きたいなって思ってかけちゃった』
"迷惑だったかな?"と問いかけるAに"そんなことねーよ"と返す。
「俺も今、Aに電話しようかと思ってたところだったし」
『本当?うれしいな』
「電話かけてきたってことは、仕事はもう終わったのか?」
『うん、ちょっと前にね。わたるは?今日は何してたの?』
「俺?俺は___」
そんな他愛のない会話をしながら家までの道のりを歩く。
『っと、そろそろやることあるから切るね。声、聴けてうれしかった』
「ん、俺も声聴けて良かった」
『じゃあ、またね』
「おう、また」
その一言で通話は切れた。電話越しのA声は元気そうで、無理をしていないとわかって安心した。ゆるむ頬をマスクで隠しながら家路をたどるのだった。
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