遠距離クリスマス【うらたぬき】/あおい ページ1
12月半ば、街にはすっかりクリスマスムードが漂っている。キラキラしたイルミネーションが施された街路樹。クリスマスにお勧めのプレゼント特集が掲載された雑誌。クリスマスの雰囲気に浮かれる恋人たち。俺もそのうちの1組になる予定だった。
今年のクリスマスこそ彼女、Aと過ごせると思っていたのだが......
『ごめんわたる。今年のクリスマスも、そっちに帰れそうにないや』
「そか、仕事?」
『うん、急に任されちゃって』
「なるほどね。まあ無理しない程度に頑張れよ」
『ありがとう。わたるも無理しないでね』
「おー、じゃ、またな」
『うん、また』
ぷつりと切れた通話画面をしばらく眺めて、ため息をこぼした。2年ほど前に海外派遣された彼女は仕事が忙しくてなかなか日本に戻って来ない。そんな彼女が久しぶりに休暇を取って戻ってくるはずだったクリスマス。どうやら仕事の都合で休暇を取れなくなってしまったらしい。仕事ならしょうがないと割り切ってはいるものの、やっぱり一緒に過ごせると思っていた分、少し......いや、かなり寂しさを感じる。
「今年もだめだったか」
自室の机の上に置いてある紙袋を見て呟く。中身は彼女へのクリスマスプレゼント、それから____。紙袋の隣にはAが海外派遣される前の年のクリスマスに2人で撮った写真が飾ってある。俺も彼女も楽しそうに笑っている。
「そろそろ寝るか」
幸せそうな写真を眺めていたら、余計寂しさを感じてしまって思わず写真から目をそらす。そしてクリスマスにAに会えないという事実からも目をそらすように布団にもぐって、目を閉じた。
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