【nqrse】きみの唇をよごしたい/匿名 ページ25
×
Aごめん、仕事入っちゃった、
ぶるっ、と手の中のスマホが震えたかと思えば、泣き顔のスタンプと共に彼女から送られてきたメッセージ。
焦って送ったのか、肝心の仕事が入った日が書かれていない。
でも、おれはすぐに分かってしまった。
「うー…ぼっちクリスマス確定かあぁ〜…」
でも仕事なら仕方ない。
そう思い、舌の上まで上ってきた深いため息をぐっと飲み込む。
うわぁ大変…おれは大丈夫だから、気にすんなよ!
そのメッセージと一緒に、お気に入りの可愛いスタンプを返す。
既読はつかない。仕事に戻ったのだろう。
歌い手という名のひきこもりし放題の職業のおれとは違い、Aはほぼ毎日早朝から夜遅くまで仕事仕事仕事。
せめておれといる時だけでも休ませてあげたいし、甘やかしたいし、楽しませてあげたくて。
クリスマスケーキは、Aの好きなチョコレートケーキで。前日にワインを買ってふたりで久しぶりに飲もうと思ってた。
仕事の愚痴を聞いて、おれの活動の話をして、ふたりの将来の話なんてしちゃって。
クリスマスプレゼントはどうしよう、なんてらしくもなく浮かれまくっていた。
仕事だ。仕方ない。けど、やっぱり
「ざんねん…だなぁ」
乾いた笑みと共にそうこぼし、クリスマスケーキの予約をキャンセルする。
ボタンを数個押せば、ハイ終わり。ふたりで食べるには大きすぎるクリスマスケーキが、おれの元に届かなくなる。なんて呆気ないのだろう。
ぽっかりと空いた心の穴を吹き抜ける風が冷たくて、ひりついて、紛らわすようにこたつに潜り込む。
きっと、寂しいのはおれだけじゃない。
そうツイートすると、すぐに届くリプライ。
いつもちらりと覗くリプ欄だけど、今だけはそんな気になれなくって。
黒く醜い気持ちをたったひとり、冷たい微睡みの中に落としたのだった。
×
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 60人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
音溜 - 作者様が豪華すぎる、、！！ 生きててよかった、、(^ω^) (2019年12月28日 5時) (
レス) id: 826a111be6 (このIDを非表示/違反報告)
人 - 私の大好きな作家さん面白いです…聖夜いいですね！ (2019年12月25日 23時) (レス) id: 85e6f3523b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
