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ぷち忘年会の帰りだった。
その日も帰り道にあるコンビニに寄って、小腹を満たせるものを買おうとしていた。
迷いに迷った末、エクレアを買う。
冬は無性に甘いものが食べたくなるからね。
コンビニを出ようとすると、出入り口付近に置かれた赤色のチラシに目が止まる。
あぁ。もうそんな季節か。
なんて少し白々しいかな。
ふふっ、と微笑をこぼして帰路についた。
✧-❊--❊-✧
『ただいまぁ〜!』
「おかえりー」
玄関で少し声を張って言うと、奥からそう返ってきて口元を緩ませた。
靴を揃える余裕もなく靴を脱ぎ捨て、リビングに向かう。
彼方さんはあの日と同じようにソファーに座って、スマホをいじっていた。
『もう! またゲーム?』
「えーもう終わるよ」
『彼方さんのばーかばーか』
「えー?」
からかうように笑う彼方さんの肩を、軽く小突くとまた笑って「終わったってば」と言う。
ダイニングに行くと、テーブルの上にチキンと湯気を上げるシチューが用意されていた。
去年ライブを優先したお詫びにと、私を見送ったあと彼方さんが用意してくれたものだ。
後に…本当にずっと後に彼方さんはのほほんとした声で「まふまふの手伝いがなかったらやばかった」としみじみと語っていた。
『わあ〜美味しそう!』
「当たりえだろ〜?」
『わーやな言い方』
「おい」
顔を見合わせて、くすくすと笑い合う。
向かい合って席について、いただきますと手を合わせる。
優しくて、温かい味がした。
今まで食べたどんなシチューよりも美味しくて、視界がじわりと滲んだ。
『彼方さん、ありがとう』
「こちらこそ」
大きないちごが目を引くショートケーキを掬うふたりの左手の薬指には、銀色のリングが、ふたりの邪魔をしないように静かに輝いていた。
✧ Merry Christmas ✧
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音溜 - 作者様が豪華すぎる、、!! 生きててよかった、、(^ω^) (2019年12月28日 5時) (レス) id: 826a111be6 (このIDを非表示/違反報告)
人 - 私の大好きな作家さん面白いです…聖夜いいですね! (2019年12月25日 23時) (レス) id: 85e6f3523b (このIDを非表示/違反報告)
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