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覚悟と向き合って。 ページ18

珠世side


犬丸「珠世という鬼を知っているか」

・・
彼女が、彼と重なった。


砂埃が舞う中で、時がゆっくりと動いた。


隊士が前にいるというのに、逃げるなんて、選択がなかった。


絡まった糸が少しずつ解けて


__逃げろ__


声が、聞こえた。


__お前は、俺たちの希望だから__


5年前の、あの時の記憶が。


ピンと張った。


聲が、聞こえた。


あのとき逃げたのは私だけじゃない。


少し遠くで、2人の子供も逃げていた。


__逃げろ__の言葉は、私にも彼女たちにも言っていた。


手足が長く綺麗な瞳の女の子と、黒髪を靡かせる色白の女の子。


泣きながら走り去っていくのを覚えている。


まだ幼かったけれど、手をつないで、その言葉を確かに守っていた。


ずっと謝りたかった。こんな急に、こんな形。予想できるわけない。


愈史郎「珠世さま……?」


気づけば、愈史郎を押しのけて


頭を下げていた。


溢れる涙が。


地を濡らしていて。


犬丸「……?」


珠世「本当に、ごめんなさい……」


何の謝罪なのか、自分でもわからなかった。


けれど……彼女たちから大切な人を奪ってしまった。


私が、自分自身から大切なものを壊したように。


その人はハッとした後、私の方に歩み寄った。


愈史郎「やめろっ珠世様に手を出すな!!!」


震えていた拳を私の方に伸ばして


殴られて当然なのですよ、愈史郎。


私は貴方が思うよりずっとずっと、最低なのです。


鬼になって、たくさんの過ちをおかしてきたんです。


痛みを覚悟して、目を閉じたその時。


犬丸「会えて、良かった」


両手に、暖かな優しさを感じた。


……え……?


見開いた視界には、


犬丸「お願いがあるんです」


私の手を握って、私をまっすぐに見つめていた。


犬丸「……家族の敵を、討ちたいんです」


珠世「え……?」


犬丸「私は、聲柱・近江響我の継子だった、犬丸ひかりこと言います」


覚えていますか?


そう問われる。


覚えていないはずがない。


珠世「私、殺した……」


本当に殺されるのは私だったのに。


犬丸「師範を殺したのは、貴方じゃない」


……え……?


強い決意と共に。


犬丸「前に進むために、過去を過去で終わらせたいんです」


___



犬丸「だから、師範を殺した鬼の所在を教えてください」


元上弦の鬼。殺想忘我という血気術。


……私は、その鬼を……


珠世「知っています」


震える声が、そう伝えていた。

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白狐。(プロフ) - 瑠夢さん» ありがとうございます。大好きって、すごく心に響きます。書いてて良かったなって、この作品を誰かの「大好き」にしてくれて、ありがとう。瑠夢さんの優しいコメントがあるから、もっと頑張れます。これからもこの作品をよろしくお願いします。 (2021年2月7日 21時) (レス) id: 9ce15be352 (このIDを非表示/違反報告)
瑠夢 - 続編おめでとうございます!私、この作品大好きなんです (2021年2月1日 22時) (レス) id: d3d84c9702 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:白狐。 | 作者ホームページ:http  
作成日時:2021年1月13日 21時

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