IT'S YOU (ページ5)

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祐『そういえば代表の姫って初回で泣いたんすか？』

ふと手越がこちらを見て問う。
そういえばそんなこともあったなあ、なんて。

シ『あれ、手越知らないんだっけ』

祐『知らない知らない。俺出勤してなかったのかな、』

それは俺がAを拾った２日後の話。
彼女は律儀にお金と服を持って来た。

正直、本当に来るとは思っていなかった。

『これ、ありがとうございました。』

服には当たり前のようにクリーニング店のタグがついている。
そのタグが彼女の性格を表していた。

そしてびっくりしたのはこれだけじゃない。

初回で俺を指名し、VIPルーム。
そしてオリシャンをおろした。

こういう人は初めて見たし
長くホストをやっている先輩ですらも初めて見たと言っていた。

初回でシャンパンをおろすと
もっとお金をせびられるから普通は中々おろさない。

それでも太客がつくのは有難い。

貴「ホストクラブは他に行ってたりする？」

『今日が初めてです。』

貴「え、そうなの？行ったことあるのかなって思ってた。」

『知り合いにホス狂いがいたので話だけは良く聞いてました。』

太客、そして他店には行っていない。

この頃の俺はお金になるな、としか思ってなかった。

いや、それしか思ってなかった、というと嘘になるけど
まだ自分の中にある別の感情に気づいてなかった。

貴「この後って時間ある？」

『特に予定はないですけど…』

貴「ね、俺とご飯行こうよ、俺もっとAちゃんのこと知りたいな」

とりあえず初回だけで終わらないように、
そう思ってアフターに誘ったときだった。

『どうして…』

彼女の目には大粒の涙が浮かんでいた。

貴「え、ごめん！嫌だった？」

何か変なことを言っただろうか
普段だったら面倒くさいと思うのに
このときばかりは物凄く焦った。

彼女の涙には異様に弱い。

『ごめ…なさい。必要とされてるんだなって嬉しくて、』

貴「え？」

『お金目当てでも必要とされてることが嬉しくて、』

言葉を返せなかった。

彼女は俺の魂胆を見抜いていた。

そしてそれを嬉しいと言って笑った。

それは、あまりにも綺麗すぎる笑顔だった。