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育った環境も、抱えている悲しみもまるで違うけれど、佐久間はその阿部の言葉に何故か納得していた。そればかりか、その時に阿部ちゃんと出会っていたかったな、なんて心の中で呟いた。

そうすれば何か変わっていたかもしれない。二人とも、良い方向に。


しかしそんなのはたらればで、実際は過ぎ去ってしまった事を甘い甘いオレンジジュースを飲みながら聞くことしか出来ていない。



佐「悔しい。何で阿部ちゃんみたいな良い人が苦しまなきゃいけないんだよ」



悪いのは阿部ちゃんをいじめたソイツらだ、そう佐久間は憤慨した。



佐「殺して正解だよ、そんな奴ら」



ぶっきらぼうに言うとジュースを一気に飲み干して、一息ついてから阿部の方に向き直った。



佐「阿部ちゃんは悪くない!だから幸せになるべきだよ、今からでも」



幸せ、阿部自身とは程遠いその言葉はかつては当たり前だったもので、感覚では分かっているのだがそれはもう今の自分には訪れないもの。そんなものを今更追いかける、想像もつかないその言葉に戸惑った。



阿「…どうやって?」


佐「俺も幸せになる。だから、二人で」



ざっくばらんとした回答に阿部は少し考える素振りを見せた。



阿「俺には佐久間が幸せになる未来は見えるけど、俺が幸せになる未来は見えないな。」


佐「大丈夫。俺には見えるよ、阿部ちゃんも幸せになる未来」


阿「でも、」


佐「みんなの力も借りよう。二人だけじゃ難しいなら手伝って貰おうよ。ここの人は皆んな良い人だった。この9人でならきっと」



佐久間は8人と特別仲良くなった訳ではない。なんならまだそんなに話したことない人だっている。それでも悪い人はいない、そう感じることができた。

それが伝わりますように、阿部が考えている時間ずっと普段は信じない神様とやらに祈った。



阿「…やってみよう」



思いが伝わったのか、握り締めていた佐久間の手が汗ばんできた頃、阿部は漸く首を縦にふった。



阿「但し」



阿部はやったー、と無邪気に喜ぶ佐久間に声を大にして釘をうつ。



阿「他の7人も、一人残らず幸せにしようね」


佐「当たり前!」



頑張ろうね、そう誓い合う二人はとても楽しげで。それでいて重い重い決意をした顔をしていた。

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作者名: | 作成日時:2020年9月21日 18時

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