寂滅の天使は夜に笑う3 (ページ11)

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92阿部side ページ11

もうこのまま手を離しても良いんじゃないか。

今までの生活を思い出してそんな風に考えた。

手を離せば運が良ければ死ぬ。少なくとも怪我することが出来る。
それが何になるか分からないけど傷つけられるくらいなら自分から傷ついた方が良いんじゃないかな。

もう、どうなっても良い。

来世は彼奴らと会いませんように、そう願って手を離そうとした。

阿「ｯ＿＿＿母さ、ん」

でもそれを実行する事は出来なかった。途切れ途切れに俺の名を呼ぶ母さんの瞳から、大粒の涙が次々と流れていたからだ。

今まで一度も母さんの泣いているところなんて見たことが無かった。

強くて、正しくて、真っ直ぐで。そんな母さんは、弱いところなんてただの一度も俺たちに見せてはくれなかったんだ。

それを俺が、俺のせいで＿＿＿＿＿。

誰よりも愛してくれた人の事を悲しませてしまった。

大切な弟も傷つけてしまった。

こんな俺はどうしたら良い？出来損ないで、周りを不幸にさせる疫病神のような俺は。

どうしたら幸せになれる？幸せに出来る？

母「亮ちゃん…分かったからｯ…分かったから戻ってきてｯ」

…今からでも、やり直せる？

母「お母さんは味方だから！どんな亮ちゃんでも大好きだから！」

こんな、俺でも＿＿＿。

阿「母さんっ！」

こんな俺でも生きてる事で母さんが笑顔になれるなら、それならそうした方が良いじゃないか。

今更だけど、そんな簡単な事に気がついた。

阿「ごめん、ごめんなさいｯ母さん。」

これからは心配かけないようにするから。

母「亮平…大丈夫。大丈夫よ。お母さんが守るから。亮平は何の心配もしなくて良いの。ね？少しお休みしましょう。」

阿「う、んっ」