リスタート【XM】 (ページ9)

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Minseuk Side

9年前の冬、

俺は振られた。

"ミンソクの気持ちが全然わかんない"

大好きで、

愛おしくて、

全部を捧げたい、そう思ってた彼女に今まで見たことない悲しそうな顔で別れを告げられた。

なんで？

どうして？

好きだよ、A、

俺は別れたくないよ。

言いたかった言葉はたくさんあったはずなのに俺の口からは、

「…ごめん」

って、情けない声で出たたった三文字だった。

"そーゆうとこだよ、ミンソク"

彼女の目から溢れた涙にいつも通りに手を伸ばすけど、一瞬頬に触れて思わず手を引っこめる。

あぁ、もうこうやってやるのは俺の役目じゃないんだな。

泣いてる彼女の涙を拭って、

抱き締めて、

もう俺はできないんだな。

なんて思ったら涙が出そうになったから、

最後の姿が格好悪い泣いた姿なんて嫌だったから、

俺は最後の最後まで強がった。

あの日、

".必死に縋って、引き止めれば良かった"

九年経った今も思ってるなんて、9年前の俺は知る筈もない＿＿＿＿

「久しぶりヒョン～」

"わ～ここのタコの唐揚げ美味しいよ、ヒョンも食べる？"

"あ～ん"ってタコの唐揚げを口の前にやってくるイーシン。

「いや、要らない」

「相変わらずだね、ヒョンは～」

潔癖、潔癖～なんて楽しそうなお前も昔と全く変わってない。

イーシンは大学のときの後輩で卒業してからもこうやって定期的に会ってる。

……Aと繋がっていられる唯一の存在だ。

「元気にしてる？」

誰が、なんて言わなくてもイーシンは分かってる。

「一ヶ月前は元気そうだったよ
でもそんなに気になるなら僕に毎回聞くんじゃなくてヒョンからなにかアクション起こせばいいのに～」

それができたらとっくに、、

「うん、そうだね。
ヒョンはずっと不器用だもんね、九年経った今も。」

「…バカにしてんのか」

会おうと思えば会える。

連絡しようと思えばできる。

イーシンもいるんだから、Aと繋がるツールが探さなくてもあることなんて知ってるけど、

怖いんだ。

9年もずっと、忘れられないで好きでいる俺は、

新しい彼氏がいて、

未来を見据えてるAが居ることが、

俺じゃない他の誰かと未来を描いてるAが。

やっかいなことに人は歳を取ればとるほど臆病になるもんだ。