辞める勇気 (ページ18)

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1晩よく考えた

文ちゃんは「自分と向き合って」
って言ったけど

自分の、文ちゃんに対する
『好き』の気持ちが
恋愛感情だって言えるのかわからなかった

今までジャニーズ一筋だった私に、
恋する余裕なんてなかったし

文ちゃんはみんなの人気者の
アイドルで
私はもう一般人

文ちゃんの輝かしい将来を奪いたくない

夜が明けるまで悩んだ

ジュニアをやめる時と同じぐらい
勇気がいる決断だった

心の中には
もっと文ちゃんの隣にいたいって思う
わがままな自分がいたから

でも、前に進もう

もう決めたから

「文ちゃん、返事、聞いてくれますか？」

「うん」

夕方、私は文ちゃんを家に呼んだ

「文ちゃん、今までありがとうございました
気持ち、ほんまに嬉しくて、
初めてやったから。
でも、隣にはいられません。
ごめんなさい」

「俺も、今までありがとう
大好きやったで

また、会おな」

断った理由も聞かず
文ちゃんは私の家を出ていった

頬に暖かい感触がして

「私、文ちゃんのこと好きやったんや」

って気付いた

でも、このは間違ってなかったと思う

あの日から何年ぐらい経っただろうか

私は結婚して子供が出来た

旦那さんはもちろん大切だけれど

テレビの中で輝く昔の仲間も
すごく大切で

もう未練はないけど
「やっぱりいいな」って思って
ついついみんなが出る番組を
チェックしてしまう

「なぁ、おかん」

「うん?」

「僕な、大きくなったら
るーたくんになりたいねん。」

息子は昔から関ジュが大好きで
(きっと私の影響で)
小さい頃はりゅーたくんが言えなくて
今でもるーたくんって呼んでる

「なんで？」

「だってな、ずっと文ちゃんの隣におれるやん
文ちゃんの隣で、文ちゃんを笑顔にすんねん
そしたら、もっとみんなが笑顔になるやろ
ほんで、おかんも笑顔になるやろ」

「文ちゃんもおかんも
顔は笑ってるけど
心は笑ってないよ」

こんな小さな子に心配されるなんて

文ちゃんも私もまだまだやね

息子を抱き寄せて

涙をこぼした