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ありがとうございます、と体も表情も固くなって言うと、スンフンはまたクスクスと鼻を鳴らして笑った。

「オッパ…あのね」
「うん?」

少し唇を突き出して微笑むスンフンは、少し体を屈めてAの目線に近付く。小さく、囁くような声で彼を呼んだAの声が聞き取りにくく、耳を傾けた。

「…ありがとう」
「何が?」
「おめでとうって言ってくれたじゃん」
「ああ、ううん、本当に良かった。色々あるだろうけど、Aは上手く出来るから、一緒に頑張ろうね」
「うん…」

子供をあやす様に頭を撫で、髪がくしゃくしゃになろうとAは気にもしない。と言うよりはそんな事を気にかける程頭が働いていなかった。あまりにも彼女が無反応なので、スンフンはわざと乱した髪をまた指で梳いて整える。

「あ…A〜、探したんだよ?トイレ行ったっきり戻らないから、また体調でも崩したのかと思った」

キョロキョロとあたりを見渡しながら歩いていたヨシノリは、Aの姿を見つけると途端に表情が和らぎ、笑顔になる。

「スンフニヒョンお久しぶりです。良かった、ヒョンと話してたんだね」
「うん」
「ヒョンソギヒョンもいないんだ。電話してみようかな…」
「いつもの二人だ。Aとヒョンソクでいなくなっちゃうんだね」
「たまたまだよ」

じゃあまたね。頑張ってね、とAの頭をぽん、と叩くとあっさりとスンフンは立ち去ってしまった。Aの少し寂しそうな背中を見つめながら、ヒョンソクに電話をかけるヨシノリは、複雑な気持ちで彼女を見つめていた。彼女を応援したい気持ちもあるが、ヒョンソクを応援したい気持ちもある。

(スンフニヒョンの事を忘れろなんて思わないけど、ヒョンソギヒョンの事を好きになってくれたらな)

じっとスンフンの後ろ姿を見つめるAの横顔が切ない。ハルトから二人が別れた理由をこっそりと教えてもらったが、どちらも納得したとはいえ、憎しみあった別れではないからこそ余計にAは辛いのだろうか。ヒョンソクと一緒にいる時の方が楽しそうで幸せそうに見えるのに、何故辛い思いをしてまでずっと…

どちらも不幸にならない方法はないのか、と片隅で考え、ヨシノリはヒョンソクが電話に出たことにすら気が付かなかった。

「あ、ヒョン!どこに居たんですか」
「どこに居たと思う?俺多分、運命の神様に嫌われてると思うよ…」
「え、ずっとそこに…?」
「そう……」

物陰からこそこそと出てきたヒョンソクは、電話を切った。

遅咲きの恋心→←3



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ユジ(プロフ) - おかか。さん» いつもありがとうございます。最低でも一日1〜2話を目標に更新してます。引き続きお楽しみ下さい^^ (2021年6月1日 10時) (レス) id: f31187c779 (このIDを非表示/違反報告)
おかか。(プロフ) - 更新ありがとうございます!!通知きてすぐ飛んできちゃいました!これからも頑張ってください! (2021年6月1日 0時) (レス) id: 7c39d6ce87 (このIDを非表示/違反報告)
ユジ(プロフ) - おかか。さん» おかか。さん、コメント有難うございます。頑張って書いていきます! (2021年5月24日 6時) (レス) id: f31187c779 (このIDを非表示/違反報告)
おかか。(プロフ) - すごく面白かったです!書き方も主人公ちゃんの性格もとってもすきです! (2021年5月24日 1時) (レス) id: 7c39d6ce87 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ユジ | 作者ホームページ:http://twitter.com/mexaztrcx  
作成日時:2021年5月10日 23時

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