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「歌詞がちょっと暗めだけど曲はアップテンポが良いな」

大雑把なAの意見を元に漸く作曲に取り掛かり、Aのデビューがいよいよ現実的なものになると、宿舎にいるよりも作業室に集まる事が増えた四人は、ジュンギュから連絡が来るまでそこに引き篭もり、作業に全力を注ぎ込む。

「クソ眠い」
「女がクソとか言うな」

両目の瞼を指で無理やり開きながらモニターを見つめていたAが呟き、ハルトが横顔を軽く何度か叩く。

「肌に悪いし寝たら?」
「少しだけ横になる……」

ヨシノリにそう言われて無造作に床に寝転ぶと、彼女の意識が途端になくなり、その後何と声をかけても起きないAを見て、少し無理してたのかな?とヒョンソクが上着をかけた。

「これじゃ多分朝まで寝るよ」
「俺達ももー休んで良いんじゃないですかねー」

強く声を吐き出しながら椅子の背もたれにゆっくりと体を倒すと、圧をかけるようにハルトが言う。ジュンギュも諦めて連絡して来なくなるほど、宿舎にいる時間が減っていた。先に帰って良いよ、とヒョンソクが言えば、ハルトは弾むように立ち上がると拳を握ったまま肘を後ろに引いて、意気揚々と作業室を出て行った。

「ヒョンは?」
「A寝たばっかりだし今起こすのも悪いから、もう少ししてからAと帰るよ」

静かに寝息を立てるAを見下ろし、じゃあ先に帰ります。と言ってドアに手をかけたヨシノリはヒョンソクに軽く頭を下げて出て行った。

再びモニターに向かって作業を再開すると、彼はやっと完成した仮の音源にAと名前を設定して、ファイルを保存する。
一息吐こうとAの横に座って壁に寄り掛かると、安堵と気の緩みからやってきた睡魔に襲われて少しだけ目を閉じた。つもりだった。

「…え、7時…え?朝?」

完全に一夜を明かしたらしいヒョンソクとAは、肌寒さにお互いに寄り添い、小さくなって眠っていた。起きた途端から身震いがするのに、何故今まで目が覚めなかったのか不思議でならない。

「ヒョン…離れないで…寒い…死ぬ…」
「あ、ごめん…じゃなくて、A起きて、風邪引く!」

まだうとうとと寝惚けたまま目を擦るAを抱える様に起こし、慌てて宿舎まで戻ると、Aはリビングのソファーに倒れ込んでまた目を閉じた。それをまた起こしてベッドに連れて行く体力もヒョンソクには無く、ほぼ不休の作業で疲れ果てた彼は手っ取り早く布団を部屋から運び込み、その布団ごとソファーに倒れ込んだ

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ユジ(プロフ) - おかか。さん» いつもありがとうございます。最低でも一日1〜2話を目標に更新してます。引き続きお楽しみ下さい^^ (2021年6月1日 10時) (レス) id: f31187c779 (このIDを非表示/違反報告)
おかか。(プロフ) - 更新ありがとうございます!!通知きてすぐ飛んできちゃいました!これからも頑張ってください! (2021年6月1日 0時) (レス) id: 7c39d6ce87 (このIDを非表示/違反報告)
ユジ(プロフ) - おかか。さん» おかか。さん、コメント有難うございます。頑張って書いていきます! (2021年5月24日 6時) (レス) id: f31187c779 (このIDを非表示/違反報告)
おかか。(プロフ) - すごく面白かったです!書き方も主人公ちゃんの性格もとってもすきです! (2021年5月24日 1時) (レス) id: 7c39d6ce87 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ユジ | 作者ホームページ:http://twitter.com/mexaztrcx  
作成日時:2021年5月10日 23時

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