透明な紫陽花

作業室配信 ページ3

「こんばんはー…」

Live配信を始めたAは小声で挨拶をするとカメラいっぱいに顔を映した。作業中らしい音楽が聞こえ、辺りは暗い。どこにいるの？というペンからのコメントを読み上げたAはカメラから少し離れると前髪を直した。

「…ヒョンソギヒョンの作業室です、ヒョンが今作業してます…私が寝てたのに構わず作業してます」
「人の作業室で構わず寝てたのはお前だろ〜！」
「……はい、ヒョンは今何をしてますか」

さっき自分で言ってたじゃん！と言いつつも作曲の様子を映す様にAに指示をするヒョンソクは、Aに声の録音を頼んだ。曲の一部に使用したいらしい。

突如として始まった共同生活でのAの仕事は、treasureの広報活動だ。共同生活は勿論公言されており、当たり前にバッシングの的になったAだが、本人はあまり気にしていない様子だった。そもそも男女混合グループとしての活動を目指している彼女には、アンチがつく事は想定内の事であり、この場でそれをいちいち気にしていたらやっていけない。と以前からLiveでペンに配信していた。

練習生時代から例の企画に至り、少数のペンが付いていたAだが、今では不思議な魅力をもつ彼女のペンは少しずつ増えている。メンバーを推すペンの中には勿論彼女の存在に抗議をする者もいるが、メンバーの普段見れない様な素の一面を公開するAを、嫌いながらも有り難みを感じる複雑な感情をもつ者も多いだろう。
デビュー直前から現在に至るまで、まるでマネージャーやスタッフの様なポジションに立ったAは、彼らのペンの中でも、彼女の動向を追うものが出る程ある程度の人気を集めてきている。

「ヒョンソギヒョンの事を今日一日ヒョンと呼び続けていますが、未だに触れてくれません。ずっとスルーです」
「反応するとやり続けるでしょ」
「反応しなくてもやり続けてるんですが、もう今日1日が終わりそうです……普段はどうやって呼び合ってるの？普段ですかー…オッパって呼びますけど、嫌がるのでヒョン、ソクの、ヒョン。で呼んだりします」
「Aにオッパ！って呼ばれると擽ったい。呼び捨てで良いよ、って言ったりもしましたけど、適当に呼んでもらってますよ」
「ヒョンだと呼び捨てっぽくなくて良いんですよね。ヒョンはAをなんて呼んでるの？ってコメントきてますよ」
「普通にA、です」
「…普通です、愛情がないので」
「さっきから俺の好感度下げる様な事しか言わない！」

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