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『Aちゃん、なんで僕なんですか？』
とりあえず、と乗せたタクシーで聞いてみる。
寝かけている彼女には届いてないかも。
「だって、まもってくれるってきいたから」
ふふふ、と彼女は笑う。
「わるいひとから、まもってくれるらしいので」
寝言のようにそう呟くと、今度は本気で眠ってしまった。
こて、と肩に頬を寄せてくる。
まったく、この子は僕のことをなんだと思っているんだろうな。
『悪い男から守る』だなんて、本当に信じちゃって危なっかしい。
僕も、その『悪い男』の一人でしかないのに。
『あんまり油断しちゃダメだよ。』
彼女を起こさないよう、小さな声で呟いた。
もうすぐ彼女の家に着く。
彼女を起こそうと肩に手を置きかけて、辞めた。
こんな、男の前で無防備に寝てる君が悪いんですよ。
『すみません。やっぱりそのまま真っ直ぐお願いします。』
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「あれ、ここ……??」
『ごめん、Aちゃん起こしても全然起きないから、僕の家来ちゃいました。』
「わあ、すみません……」
『もう遅いし、泊まっていきなよ。』
「いいんですか、やったあ」
その“やったあ”は一体、と聞きたいところだけど、胸に留める。
おじゃまします、と、幸せそうに靴を脱ぐ彼女。
寝室に案内すると、1人で寝るには少し大きいベッドを見、子供みたいに喜んで飛び込んだ。
「なかのさん、！すごい！！おっきいベッド！！」
ふわふわ〜〜〜、なんて寝転がっている。
可愛い。
お父さんってこういう気持ちかな、なんて考えてみる。
『メイク落とさないと大変ってきくけど、』
「わ、そうだ、、、、」
『僕ので良ければ、着替えてください』
「わあ、ありがとうございます｣
鞄からガサゴソと取り出し、メイクを落とした彼女は幼さが増していて、
着替えを見るわけにはいかないので、背を向け、
僕はソファで寝るから、電気消しますよ、と声を掛けた時、彼女が幸せそうな声色で呟いた。
「ふふ、なかのさんのいいにおい」
まったく、どこまでもこの子は、
僕の中で、ぷつん、と音がした。
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作者名：佐伯 | 作成日時：2024年2月14日 21時
