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「それ、本気で言ってんの？」
同期の彼が、彼女にぐっと顔を近付けた。
「な、なにはると、」
「俺言ってるよね、気をつけないと悪い男に襲われるよって、」
まるで2人しかいないかのような空気。
彼女の視線が横の彼に奪われている。
酔った彼女の目。既にとろんと蕩けていて、警戒心の欠片もない。
僕のものにしたいな、なんて考えがよぎる。
かたや彼も引く様子がなく。
何か言わなきゃ、何か。
このままだと彼女が取られてしまう気がして。
何か、
『大丈夫だよね、悪い男が居たら僕が守るから』
咄嗟に出たにしてはキザすぎる。
ヤスさんに聞かれていたらなんだよお前それ〜〜と笑われそうである。
同期の彼への嫉妬が先走りすぎて、牽制したみたいにもなってしまった。
彼女も、横の彼も、ぽかんとした顔で僕を見つめている。
「えへへ、なにそれ、なかのさんかっこい〜〜〜すき〜」
その何とも言えない空気の中、口を開いたのは彼女であった。
「おい、言ったそばからかよ！｣
と横の彼も笑って突っ込んで、
何事も無かったかのように食事会改め飲み会は進み、そのまま2時間ほど経過し、お開きの時間となった。
先程の羞恥心から僕もお酒を進めてしまい、気付かぬまま終電もない時間に。
Aちゃんの方を見ると、もう寝てるんじゃないかって程に泥酔している。
その横で彼女を抱き抱える彼。
全く、どこまで行っても心配だなぁ。
「A、帰るぞ。ほら立てる？」
「ん〜〜、」
「もうみんな帰るよ、送ってあげるから」
「ん〜〜〜〜、なかのさんも、かえっちゃった？」
「え？いやまだ居るけど」
「じゃあなかのさんに送ってもらう！！！」
急なご指名。
それに驚いたのは僕だけじゃなかったみたいで、彼も怪訝な目で僕を見てきている。
先輩をそんな睨むもんじゃないよ、と思いつつ、
渋々彼女を僕に引き渡した彼は、不服そうに夜に消えていった。
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作者名：佐伯 | 作成日時：2024年2月14日 21時
