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krm side
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かなり好かれていると思っていた。
ご飯に誘えば、目を見開いて喜んでくれるし、
出番が被った時は俺が1人になるのを見計らってどうでもいい話をしに来る。
今日だって、彼女からのチョコレートを貰う気満々だった。
それなのに。
自分の名前が呼ばれた気がして、顔を向けると、
そこには顔を真っ赤にした彼女と、京極さん。
『本命です』と言わんばかりの可愛らしい箱を差し出し、「京極さんだけ」と照れたように逃げる。
途端、自分の中の黒い感情が渦巻くのが分かった。
その照れた表情は、自分にだけ向けられるものであると思っていたのに、
彼女は自分のことが好きなんじゃないか、と自惚れて、
知らない間に好きになってしまっていただなんて笑えない。
こんな時に気付くだなんて、
部屋をぱたぱたと出ていく彼女を追いかけて、思わず腕を掴む。
『A、』
わっ、と声をあげて、怯えたような目で俺を見る彼女。
焦りを隠しきれず、余計に手に力が入ってしまう。
『チョコ、』
「え？」
『俺にはチョコ、ないんですか』
「ちょっと待ってください」
『京極さんにはあげてたのに、』
「い、いたいですくるまさん、」
『京極さんのこと、好きなんですか』
彼女のほうを見ると、目いっぱいに涙が溜まっていた。
ハッとして手を離す。
『ごめん、俺、』
「私だって、あげたかったのに、」
「くるまさんにあげようと思って、頑張って手作りしたんです。
でも、しっぱい、しちゃって」
ぽろぽろと涙を流しながら事の顛末を必死に伝える彼女に、自分の中の庇護欲と加虐心が同時に掻き立てられる。
『そんなの、Aがくれるなら気にならないのに』
「ほんとですか、？」
『好きな子から貰えない方が、よっぽど嫌です』
「す、」
『好き』
「うそ、」
『嘘じゃないです、目見て』
彼女の涙を拭うように両手を添え、強引にこちらを向かせる。
潤んだ目すら、愛おしい。
『僕が好きなのは、君です』
「わ、わたしも」
好きです。
『っ、は〜〜〜〜〜〜〜』
力が抜けて、急に大きな声を出すと、肩がぴくっと震えた。
「チョコ、作り直すので、もうちょっとだけ待って下さい」
『うん』
「でもすっごく下手で、」
『うん』
「おしゃれなのとか無理だし、」
『うん』
「でも、がんばります。」
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作者名：佐伯 | 作成日時：2024年2月14日 21時
