紬【短編集】 (ページ2)

今日:22 hit、昨日:17 hit、合計:20,066 hit

◾︎ ページ2

．

「A、何持ってんの。」

耳元で聞こえたその声の元を見ると、、そこにはお世話になっている先輩の1人、京極さんが少し屈んでこちらを見ている。

その視線は私の手元にあったちいさな箱に移り、にやにやした顔に変わった彼。

「チョコ？」

「はい、そうです…」

「誰宛？」

「それが…失敗しちゃったので……」

「失敗？」

「ハート型が、こう、綺麗にぱっくりと……｣

両手でハートがパリンと割れた仕草をすると、眉を上げて大笑い。

「やば、最悪やん」

「もう、なんなんですか、聞いたから答えたのに…」

「あ〜、面白。
　まあでも失敗したなら、俺に頂戴よ、2つに割れてるなら丁度ええやん｣

「丁度いいとは……??」

「後でくるまと一緒にでも食べようかなーと思って。」

急なその名前に熱が上がる。

「ダメです！！！ダメ！！くるまさんとなんて、絶対ダメ！！！」

さっきのニヤニヤした表情から一転、きょとんとした京極さん。

私の目をじっと見つめ、ふうん、とだけ言ってまたニヤニヤした顔に戻った。

「くるまねえ、」

とつぶやく彼に、全て見透かされているような気がして

「とにかく、京極さんだけで食べて下さい！！絶対！！京極さんだけでですから！！！！」

いつもお疲れ様です！！と足早に部屋を出た。