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愛しいカウレス、美しい君。君の傍にいると落ち着くというのは......言わない方がいいかな。言っても信じてもらえないだろう。これまでの私の行いのせいで、どうせ無理だと、どうせ叶わないと、いつも諦めてばかりだ。
今日ぐらいは言っても信じてもらえるだろうか。信じられなくても...甘えてみたいな。
「なあ...カウレス。私はお前を愛している。お前は私を愛しているか?」
分かりきった質問を繰り返す。彼から返事がもらえるまで。
カウレス「ああ、もちろん」
その後に続く言葉を、私は知っている。
アルジュナ「好きだよ。」
「____カウレス、は?」
アルジュナ「寝ぼけて俺をカウレスと勘違いしたのかい?うんうん、女の子としても可愛らしいね。この長い黒髪もよく似合う。」
知っていた言葉を口にしたのは、最悪の男だった。遠くからよく見えた空想樹に取り込まれるような形で、私の手足はそれに飲み込まれていた。もう少しで全身が、そして命が飲み込まれるのを、肌で感じている。
「いやいや...嘘だろ...」
そんな初歩的なミスで。自分を初めて呪おうと思った、自分を初めて殺してやろうかと思った。もう少しで反撃の時間は訪れたというのに、こんなにも初歩的なミスですべては崩れ去った。
「私は...小鳥遊家の当主として...さ、作戦を立案...して...!」
アルジュナ「全部見たし焼き払った。」
「......お前はカウレスなんかじゃない。カウレスに会わせてくれ。」
アルジュナ「死体にしたら会わせてあげるよ。」
「...ッ!?」
アルジュナ「あーあ、とうとう口を塞ぎに来たか。君が完全に取り込まれるのが先か、婚約者に会えるのが先か。すごく楽しみだな!」
こんなことはあってはならない、あっては皆が死ぬ。私なんぞの命で彼らが救われるのならいいが、私なんぞのために死んでは、
死んでは......別にいい。元より彼らは私の駒であり、彼らもそれを誓った。元より彼らの生存率をあげる作戦なんて、私には立案できないものだった。父のように非情な人間にはなれなかったことが、私の敗北となる。
「(すまない...皆の望む人間に、結局私はなれなかったんだ。)」
もう、口も開かなくなる頃だろう。少しぐらい本音を吐いたところで、もう誰も私に厳しくも、優しくもしない。すべては終わるんだから。
「死にたくない...ずっと一緒にいたい...」
アルジュナ「......人間らしくなるなよ、気持ち悪い。」
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作者名:琲世 | 作成日時:2022年1月25日 0時