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午前0時 ページ1

『エスプレッソ、ホットで。』




今日、私は半年付き合っていた彼と別れた。

というのも、偶然浮気現場に居合わせた。
私よりもかわいい女の子と一緒にいた。
私が多忙のあまり全く会えてなかったって比もある…
だから、どうこう言えたもんじゃない。




『最悪だ〜………にがい。』



考え込んでいたから、ちゃんとメニューを見ないでエスプレッソを頼んでしまった。
あまり飲まないからとても苦く感じる。
ココアにでもしとけばよかった。



『どうしたもんかな…。』


一口飲んで一息つく。
流石に夜の10時となると、お店も静か。
動くのも面倒だし、落ち着くまでここにいよう。


店内の居心地がいい。
ぼーっとしていると、段々と視界がぼやけて、次第に眠くなって私はいつの間にか眠ってしまった。









「アメリカーノ。2つ下さい。」



男の人の声が聞こえてハッとした。
え、今何時?


腕時計を見ると針は午前0時を指していた。
私、2時間も寝てたの?
もう日を超えてる………。
頼んだエスプレッソももうすっかり冷めているし。
帰らなきゃ。


席を立とうとしたその時、テーブルにコーヒーが置かれた。



『え?』


顔を上げると、さっきの声の男の人。
2メートルくらいありそうな背の高さ、整った顔。
ちょっとかっこいいかも…。



MG「気持ちよさそうに寝てたから。それ、冷めてると思って。」



にっこりと笑って、私の前に座った。




『ごめんなさい、お金返します。』

MG「いいですよ!俺がやりたくてやったことなんで。気にせず受け取って下さい。」



またにっこりと笑う彼。
誰だかわからない人に、よくここまでできるな…。
テーブルのコーヒーをグイグイと渡すものだから、ここまで来たら受け取らないと申し訳ない。



『じゃあお言葉に甘えて………うっ。』


1口飲んだけど、彼の頼んだものは苦かった。
苦いと顔に出す私と、その顔を見て笑う彼。
もう少し話したかったけど、明日も仕事がある。
本当に帰らなきゃ。



『それじゃあ私、帰らなきゃなんで。』



貰ったアメリカーノを持って、席を立った。



『ごちそうさまでした。』

MG「いえ、おやすみなさい。」

『おやすみなさい。』



挨拶を交わしてお店を出た。

全然知らない彼、いい人だったな……。


彼からもらったコーヒーは、私が頼んだものよりも暖かい気がした。

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作者名:ニカ | 作成日時:2017年2月26日 12時

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