【ヒプマイ】オートマタ・イストリア -23章- 四色が交わる時、運命は変わり出す (ページ37)

今日:17 hit、昨日:22 hit、合計:8,205 hit

1167話小さくも思い出が詰め込まれたメモリページ37

｢そ、そうだ……！！これ程捜索し、見つからないのであれば、恐らく向こうが意図的に隠れていると考えられる…！｣

この場に若頭と警官がいれば、珍しく必死さが滲み出る軍人を見てバシバシと太腿か地面を叩きながら爆笑していた事だろう。幸い居ないのだが

理鶯の言っている意味は殆ど理解出来ていないA。しかし彼の優しさはとても伝わり、悲しそうな表情から綻ばせた

『ふ……そう、ですね。私が困った時にポンッと現れるかもしないですね……』

｢きっとその筈だ…！だからその日まで待つとしよう｣

『ありがとうございます理鶯さん』

グビッと勢いよく珈琲を飲み干したAは、駆け足でテントの中に戻っていく。何かあったのかとその後ろ姿を見送った理鶯は首を傾げ帰ってくるのを待った

数秒後、Aは手の平サイズの半透明なプラスチック製のケースを手にして戻ってきた

『あの理鶯さんっ！これ預かって頂けませんか！？』

｢む？メモリーカードケースか？｣

理鶯の手に乗せられたのは、SDカードが何枚かはめられていたメモリーカードケース。また沢山収納出来そうだが、引き締まった彼女の表情から察するにもう失くしたくないのだろう

彼女の言葉を待つよりも、理鶯はそれを握り締めて微笑んだ

｢了解した。これは小官が責任を持って管理しておこう｣

『ありがとうございます！』

頭を下げたAは、理鶯が持っていたコーヒーカップが空になっている事に気付く

『あっ！もう空ですね！2杯目とかはあるんですか？』

｢いや、丁度1杯ずつに調整したので無いな｣

『それなら私が片付けますね！コーヒーカップ頂きます！』

元気になったAの勢いに負けた理鶯。｢では頼もう｣と渡し、彼女を見送る

カチャカチャと洗う音を聞きながら手に残されたケースを見下ろす。最近のSDカードは保存出来る容量が多い。高性能なスマホで撮影した高画質な動画であれば直ぐに容量を超えるが、それでも彼女が持っていたケースには既に複数枚ある

きっと残したいと思えるデータが沢山あったのだな、と小さくも思い出が詰め込まれたメモリを見れば見る程嬉しい思いが溢れた。中身が見たい気持ちも同時に湧き起こるが、勝手に見るのはプライバシーの侵害だとぐっと堪える

｢さてAの宝物を託されたのだ。しっかりと保管しなければ｣

理鶯は立ち上がり、生活を主にするテントの中へ入っていく。その時の彼からはとても楽しげな鼻歌が聞こえていた