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744話 忘れたと思ったのに ページ5

こんな状況になれば抗うのは無意味。大人しくされるがままに撫でられる事にした。嫌ではないからね。寧ろ落ち着くから好き
必然的に左馬刻さんの胸元に顔を埋めているので、彼の体温が近く香水のいい香りが鼻を擽る。2人の顔は見えないし何も喋らないから、どんな表情をしているのかは全然分からない。でも、撫で続けてはいるから怖い顔はしてない筈


さっきまで賑やかだった空間がしーん、と静まり返る。その為遠くから理鶯さんの何かを焼く音が鮮明に届いていた


『っ……』


静かになった事で忘れていた筈のモヤモヤがまた襲ってくる
折角楽しくて紛れてたのに、一瞬過ぎっただけで大きな波のように私に掛かってきた。幸い私の顔は見えていない。ポーカーフェイスがちゃんと出来るまで、このままにさせてもらおう

偶然か、私がそう思った頃に左馬刻さんは抱き締める力を少しだけ強めた気がする。銃兎さんも撫で続けてた手の動きが少しだけ乱れた気がする


……きっと気の所為だ。









「料理の準備が整ったぞ」

「おー、昼に続いて悪ぃな」

「む?Aはどうしたのだ?」

『2人にいじめられました……。というか理鶯さんラビ君見捨てた……』

「いじめてるなんて人聞きの悪い。私はただ頭を撫でてただけではありませんか」

「小官も皆が仲良くしていると判断しこの場を離れたが、違ったか?」

「俺らがいるのに無機物にカマけようとしたからだろ?」

『理不尽……!!』


未だにモヤモヤでポーカーフェイスになりきれてないが、虐められたからと丁度いい理由を使い顔を上げる。一瞬眩しさで目を細め3人を見ると、さっきとは別人な程優しい表情をしていた
……凄く安心したけど、それでも晴れない。

折角楽しい日だから3人に気付かれたくなくて、顔を左右に激しく振って誤魔化した後、勢い良く立ち上がり料理が待つ外へと駆け足で出ていった。


──後ろで3人が険しい表情で見送っていた事を知らずに。









机の上にはまたまた豪華な料理達が所狭しと並べられていた。前菜としてカプレーゼにバーニャカウダ、主食としてバゲットが置かれ、中心にはメインディッシュのローストビーフとタランチュラの丸揚げがどんっと存在感を発揮していた。


『おぉ!!めっちゃ豪華!!』

「げっ!?何でタランチュラがあンだよ!!」

「ふふふ、調理している最中に発見してな。勿論調理に戻った時に手は洗ったぞ」

「これは計算外だ……ッ!!」

745話 食べる順番、大事ですっ→←743話 忘れてたけどわっるい人達でした!!



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作者名:刹那 | 作成日時:2022年8月23日 15時

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