朱色の瞳に見惚れて ページ8
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「ぇ……」
＿＿あ、きっと今の俺のつぶやきはこいつの耳に届いてないんだろうなと思った。
急に顔を下に下げてしまったから絶望したのかと思った。泣いて縋るのかと思った。
だけど少し顔を上げたかと思えば、そいつは、彼女は、うっとりするような、妖艶な子供とはかけ離れたような笑みを浮かべていた。
それに心臓が高鳴ったのは、その笑みに興奮したっていうのも正直あったかもしれない。
でも一番の理由は、どこか諦めてしまったものが呼び起こされたから。
＿＿その朱色の瞳をずっと見続けていたいと思った。
「・・・・・・は！いや、そんな体で何立ち上がろうとしとるん！？」
ぼーっとしていると、急に彼女が壁を支えに立ち上がろうとしていたのでパッと目が覚める。
俺から見ても体はボロボロ。動かなければ激痛が、動いたら更に激痛が。
多分骨は何本も折れてるし、強烈な激痛で戦い慣れしてるやつでも激痛が邪魔して立ち上がれないやつもいる。
なのに眼の前の子供はそんなの無視して立ち上がる。
そして立ち上がり終わったかと思えば、顔を上げて、大人のような妖艶さを持ちながら、子供っぽくはしゃいでるような朱色の瞳とバッチリ目が合った。
『わからないんだ。アハハ、そうだよな？立ち上がろうとするなんて馬鹿のすることだ！！アハハｯwwwイヒヒｯｯwww痛い、痛いんだよ！！！動けば激痛が、喋れば吐血、笑ったらヒビが入っている骨が完全に折れそうだ！！なのに楽しいんだ！！嬉しいんだ！！あぁ、知りたいなぁ〜…この感情を！！ねぇ、だからもっと殺りあおう？私、君と戦うの結構好きかもしれない。ねぇ、だからもっと＿＿＿＿＿』
「は？おっと………き、きぜつ？」
子供のようにはしゃぎ、狂ったように狂笑する彼女は笑いながらくるくるとご機嫌そうに、上品に回る。
止まったと思えば戦闘狂の目をして、多分殺し合いをしようとでも言おうとしたのかもしれないが、あんな体で動けば更に体が悲鳴を上げるに決まっているので、アドレナリンが切れたのかパタリと俺の胸向かって倒れ込み気絶した。
「あー、どうしよ…」
夢なのかもしれない。自分が願って、願い続けて、勝手に希望を押し付けているだけなのかもしれない。
でもそれにしては嬉しそうな目とか、くるくる回る子供っぽいところとか、戦闘狂なところとか似すぎてるこの人も悪い。
「殺る気なくなったわ……」
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作者名：neko | 作成日時：2024年1月7日 19時
