Snow's Love (ページ9)

今日:5 hit、昨日:0 hit、合計:10,575 hit

その向こうに【ロボロ】ページ9

恐ろしい程に美しいその光景に、俺は目を離せない。不意にAはその川へ一歩踏み出した。突然の事に焦る俺はAの手首を掴む。Aは少しだけ驚いた顔をしたが、またも安心させるように笑ってゆっくりと俺の手を引き剥がした。

『私が渡るのを、見ていてね。ありがとう、着いてきてくれて。帰りは、少し先を列車が通るからね。ポーって汽笛の音が僅かにでも聞こえ始めたら、此処からそのまま音を辿って其方へ向うんだよ。ああ、心配要らないよ。きっと聞こえるから、その音は。』

訳が分からない。何故自分が帰らない話し方なんだ。どうして自分だけ別な場所に行こうとしているの。ここが何処か知っているの。Aは一体どこへ行くの。聞きたいことは山ほどある。けれど何一つ言葉にならない。

『...何で私は帰らないの、って顔してるね。ふふ、それはね。帰れないんだよ。私には汽笛の音も、ロボロの声も、聞こえないんだ。...さて。帰り方も、私が帰らない理由も教えたよね。もう私は行くね。大丈夫、此処から出られたら私はそこに居るから、ね。』

ペラペラと捲し立てるように言ってAは川の中へズブズブとその身を沈めて行った。胸下辺りまでは見えたが、その辺りから濃い霧が出てきて見えなくなった。

俺が追いかけようとしても、その川は俺が入ることを拒むように俺を強く弾いた。指から走る電撃のような痛みに耐えかね、その場に蹲ると、汽笛の音が響いた。

俺の意識はそこで潰えた。

ゆっくりと瞼を上げると安心したように笑うしんぺい神とシャオロンが写った。

｢お前！やっと起きたんか！｣

開口一番に煽るシャオロンを無視して、俺は口を開く。

｢...A、｣

その名前を聞くなり、二人は表情を歪ませた。
止めてくれ。不安にさせるなよ。

恐る恐る隣を見やる。

真っ白な、あの川に染められたような。
そう、まるで...天の川...みたいな美しい川を渡った...。

...真っ白に、青ざめた顔をしたAが居た。

｢ついさっき、息を引き取ったとこや。｣

______…

作：ちぃ汰。

銀河鉄道の夜を思いながら思いついた話。

意味分からんだなんて言わないで下さい、三途の川を1人で渡るの不安だろうなって思っただけなんです。ただ、見送りをつけた所でそれもまた辛いことになるんでしょうけど…。

ちょっと読むのに苦労してしまうような、訳の分からない言葉が好きだったりします。

読みづらいとは思いますが、ご了承ください。