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我妻善逸。
そう名乗った彼と並んで座り、私も自分の名を口にした。
「私はA。ねぇ善逸、キミはどこから来たの?」
今までこの神社に来たのは、年老いたお爺さんただ一人だった。
私のことは見えなくとも、必ず何かを語りかけてくれたお爺さん。
そのお爺さんはしばらく毎日ここに通っていたが、いつしかパタリと姿を現さなくなった。
だから久々の来訪者である善逸が、一体どんな場所から来たのか気になったのだ。
「女の子の隣女の子の隣女の子の隣」
しかし、何やらブツブツと唱えている善逸の頭には、私の質問は全く入っていないようだ。
「善逸!!」
「はぇ!?名前呼ばれちゃったどうしようもう声も可愛い死にそう!」
耳元で大きく叫んぶと、彼も負けないくらい大きな声でそう叫びだす。
「善逸って面白いわね」
なんだか彼の様子が面白くて、どうでも良くなってしまった。
クスクスと笑っていると、善逸が我に返ったのか「え!何!?どうして笑ってるの!?」とあたふたし始める。
こんなに楽しい気分になったのは久々だ。
………食べるのは今日じゃなくて、明日にしよう。
「ねぇ善逸、明日もここに来れる?」
善逸にそう問いかければ、彼は「えぇぇぇ来るよ!!絶対来る!雨でもなんでも!!」とまたもや興奮し始めた。
「あ、でもこれは約束して」
「何?」
「私のことは誰にも言っちゃダメ。………その、爺ちゃんにも」
人差し指を口元に当ててそう言えば、善逸は深く頷いた。
「勿論だよ!内緒にしてればいいんだね?」
「うん」
これで善逸のことを食べても、誰にもバレなくて済む。
そうしたら私は、ここから出て遠くに行けるのだ。
「じゃあ、俺はそろそろ帰るよ。また明日!」
笑顔で手を振る善逸に、私も小さく手を振り返す。
「やっと来たのか」
彼の姿が見えなくなったところで、足元に狐が現れた。
「そうなの。これで外に出られるわ」
「それは良かったが………しかし何故、今食べなかったのか?」
「___分からないわ」
楽しかったから。
そんな安易な理由を答えてしまっていいのかわからずに、とりあえずそう返事をする。
「そうかい」
すると狐は、腑に落ちないといった表情で消えていった。
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名無し94249号(プロフ) - パスワード教えてくださいませんか? (2019年12月27日 17時) (レス) id: 8a59bf4e66 (このIDを非表示/違反報告)
名無し94249号(プロフ) - パスワード教えてくださいませんか? (2019年12月27日 17時) (レス) id: 8a59bf4e66 (このIDを非表示/違反報告)
夜空 - 新作も見ました。とても良い作品でした! (2019年11月30日 18時) (レス) id: 345ee1e063 (このIDを非表示/違反報告)
さら - 鬼の女の子とは...ねずこちゃんですね! (2019年11月24日 18時) (レス) id: eb6c59978d (このIDを非表示/違反報告)
ななつき(プロフ) - この話好き。消さないで欲しい。また新作楽しみにしてる (2019年11月16日 1時) (レス) id: 9b592ae29e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みーた x他1人 | 作成日時:2019年11月5日 18時