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案の定、町民に捕まりに捕まり
七と書かれた暖簾の前に着く頃には3時間も経っていた。
その両の手には、もうこれ以上持てないという程の
大量の荷物で埋まっていた。

暖簾を押し上げ、帰って来たと挨拶をしようした時。



『ただ、「「おかえり、旭!」」』



2つの声が、それを遮る。
そして、腰の当たりに飛び付いてきた頭たち。
両手が塞がっている為、普通ならよろけ、尻餅を着くような場面だ。
しかし、この女は2つのミサイル攻撃に
ビクともしていなかった。



『ヒカゲ様、ヒナタ様』

「「にっしっしっし」」



荷物で下の方を見る事の出来ない旭。
きっと、零れ落ちてしまう程
大きな瞳で見上げているのだろう。
旭は、持っている荷物を器用に
全て左側に持ち替え、先刻の様に膝をつく。

これは、もう癖と言ってもいい。

自分よりも、背の小さな相手に対して
目線を合わせる行為。
紺炉様に拾われ、浅草の皆様に育てられた今日まで
これは刷り込みの様に、旭の中に定着していた。



『先日、人に飛びついては、いけませんとお伝えしませんでしたか?』

「言ってねぇぞ」

「旭の勘違いだ」

『いいえ。勘違いなどでは、ございません。この旭、確かにお2人にお伝えしました』



そう強く断言しても、お2人は聞く耳は持たないだろう。
何せ、この方たちを育ているのは…。



「おい。いつまでそうしてるんだ」



退けと言わんばかりの声に振り返れば
そこには、第七特殊部隊 大隊長こと。
浅草の破壊王。新門紅丸が立っていた。



『若様』

「「若、おかえり!」」

「おう。お前も、出てたのか?」
『はい。浦安様の所へ、油を』

「腕の調子でも、悪いのか?」

『いえ。西の納戸の滑りが悪かったので』

「そうか…」



そう、短く返した紅丸は
旭が持っていた大量の荷物。
特に重いモノばかりを強引に奪い取った。



『若様。それは(わたくし)が…』

「いい」

『しかし…』

「俺がいいって言ってんだ。文句でもあるのか?」

『いえ、そのような事は…』

「なら、問題ねぇだろ」



紅丸は、そう言い荷物を持ち
中に早々と入って行った。
そして、残されたのは3人。
旭は、紅丸の去っていった方をしばらく見つめ
双子は、その光景をまるで親の様な眼差して見ているのであった。

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作者名:たんぱく質 | 作成日時:2021年1月1日 23時

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