【炎炎】第7の日常 弐

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紺炉の眼差しに決心がつく。
櫓から紺炉を降ろすと、紅丸は櫓の柱に掴まり、身を外に投げた。
紺炉の言葉が肩に重く圧し掛かる。


“葵も若に期待してんだから”


それなのに、その言葉で心が軽くなる。

俺は、紺炉の様には上手くやれない。
どう頑張っても、葵の期待には応えてやれない。

それで、何度もアイツを失望させてきた。


だから、アイツの「〜するな」「〜しろ」に
いつしか返事もしなくなった。


これ以上、失望されたくない


これ以上、嫌われたくない



葵を言い訳に
本当は自分が傷つきたくなくて張った予防線。



それでも、アイツはまだこっちを向いてくれていた。


諦めず

投げ出さずにいてくれた

それだけで、勇気が持てる。



今からでも、遅くはないと


まだ、向き合えると




罵声が溢れる浅草に向かって声を張り上げれば
一瞬の静寂の後、歓声が沸く。
それで、町が一気にいつもの騒がしさを取り戻す。

紅丸も、その騒がしさに負けぬ大声で
今起きている事を、自分の言葉で伝えた。
地上では町民が茶化すように野次を飛ばす。
それに感化され逸る隊員を紺炉が静止し、全力で自分を立てる。
それに、自然と口元が緩む。


「全員殴り合え‼本物も偽物も関係ねぇ‼
浅草の人間さ偽物なぞに負けやしない‼
安心しろ、火事と焔人は第7が面倒を見る。思う存分殴り合え‼｣


その言葉を皮切りに、花火が打ち上げられる。
浅草の喧嘩祭り開催だ。
沸く町民の中に、今どうしても会いたい薄墨を探す。
何処にいても目立つ髪色。

今まで見つけられなかった事はない。


何処にいても


どんな時でも


必ず見つけられた


それなのに、今は目の届く範囲の何処にもいない。

いつもの持病か?とも思う。
しかし、葵はそこまで空気の読めない方向音痴ではない。
こういう時、割と近場に居るか
誰かと一緒のことの方が多い。
だから、紺炉を櫓で見つけたときは
てっきり一緒だと思った。

なのに、そこには姿はなかった。


何処行ったんだよ…


不安を覚え、苦虫を噛む。
しかし、そんな時に新たな炎柱があがる。
爆炎と共に一体の白装束が飛んだのが見えた。


「あれは…」


はっきりと見える
額に2本の角


｢どうやら、俺の喧嘩相手が見つかったようだな……｣


紺炉の仇。


葵があんな顔をする理由。


紅丸は纏を呼び寄せると、鬼のいる方へ向かった。
それを静かに見つめ、これか始まる仇討ちを見守る灰色がいた。

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