【炎炎】第7の日常 弐

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降る刀は、容赦なく急所を狙う。
しかし、少しずつ反撃に出る紅丸。
襲い来る炎をいなし、剣撃を躱す。
そして、隙を見ては火球を放つ。

しかし

分かっちゃいるが、当たらねぇな

ひらひらと火球を避ける葵は
息1つ乱さない、涼しい顔をしている。


『何処狙ってる?そんなんじゃ、私は倒れないぞ』

「うるせぇ。お前とは喧嘩はしねぇ」

『だったら、どうするんだ?
このまま一方的に嬲り殺されるか?』


確かに。
状況は、葵の方が優勢だ。
コイツの呼吸は読みにくい。

昔は、よくそれで痛い目にあった事を覚えている。


「俺にそんな趣味はねぇ。骨を折ってでも
お前を大人しくさせる。
それで、詰所に連れて帰る」

『言っている事と、やろうとしている事がチグハグだぞ』

「うるせぇ。俺は俺の我を通す。ただ、それだけだ」


会話はもうない。
あるのは、どちらかが倒れるまで
この喧嘩が終わらないという事実。
馬鹿な俺には、これ位が分かりやすくていい。


白か黒か。


生きるか死ぬか。


強いか弱いか。



俺か



お前か



もう、後には引けない。

激しい炎がぶつかり合う。
2人の間にあるもの全てを焼いていく。

紅丸の射程外に居た葵が、刀を構え直す。
刀を横にして、腕を交差した構えを取る。


『刺突霞の構え：絶刀』


たった一歩で一間を詰める。
音を超えた、切っ先が頬を掠る。
相変わらず早いと思う。

しかし、突きは直線的な攻撃。
初撃を躱せれば、後は捕まえるだけ。
踏み込んだ足は、まだ地面には着いていない。
葵が体勢の立て直すまで、盛って3秒。

それだけあれば十分だ

葵の襟に手を伸ばす。
確実に捕まえれる距離。

今度は、逃がしはしない。

襟を掴み取ると、自分の方へ引き寄せる。
暗い色した目と視線が交わる。
見知った浅葱が、緑色を孕んでいる気がする。


そんな目するな


瞳の奥に昔の自分が見える。
紅丸は、一度自分の頭を後ろに反らした。
そして、葵の頭に鈍い音がする程の頭突きを叩き込んだ。

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