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連れてこられたのは、町はずれの隅田川。
土手を降りたところに、薄墨がいる。
怒りはあるが、その姿に安心する。


「おい。来てやったぞ」


その言葉に、顔を傾ける葵。


『ご足労、ありがとうございます』

「本当だ。わざわざこんな所まで
連れてきて来やがって」


相変わらず、背中を向けたままの葵。
その時、見えないはずの睫毛は揺れた気がする。
ゆっくりと口が開かれる。


『若は、私に話があるんだよね?』

「あぁ。その為に来たんだ。
寝ぼけた事聞くんじゃね」

『でも、私は若と話したくないの…』

「はぁ?だったら、何の為にここまで連れてきた」

『それは……』


振り返る葵。
その時、背筋が凍った。
今までで、一番冷たい目を見せる。

葵が重たげに腕を持ち上げ指を鳴らせば
顔の近くで、軽い爆発が起きる。
それに、反射的に頭に血が上る。


「何すんだ、葵⁉」

『喧嘩だよ。昔から、好きでしょ?』


淡々と吐かれる言葉に、話が見えなくなる。
話をする為に来たのに、何故喧嘩になるんだ。


「おい。どういうつもりだ…」

『……話し合いなんて、最終的に喧嘩になるだけ。
だったら、初めからこうした方が早い』

「ふざけんな!俺に、戦う気はねぇ」

『アンタになくても、私にはある。
ここでは、力が正義。だったら、方法は1つだけ』


いつぞや自分が吐いた言葉が痛い。
ゆっくり振り上げられる葵の手には、超然たる炎。
その熱は天を焦がし、雲を消す。


「おい‼やめろ、葵!」


炎は刀のとなり、烈々と盛る。
視認できない速度で振り下ろされた刀は、一切を灰燼に帰す。
辺り一面の水は蒸発し、花は枯れ果て、乾燥した肌を切った。

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たんぱく質(プロフ) - なっちんさん» 長文になってしまい、大変申し訳ありません。以下が、この作品に設けた私なり定義です。なっちゃん様や他の読者様には、ご不便をお掛けしますが、なにとぞご容赦を頂ければと。 (2020年7月12日 8時) (レス) id: aad2ad7f17 (このIDを非表示/違反報告)
たんぱく質(プロフ) - なっちんさん» 2つ目は、私個人の思い入れです。葵とは、太陽向かって成長する植物です。漢字自体も太陽と関わり深く、それで紅丸との関係性を表現しています。また、紺炉と紅丸の名前に色が含まれており、設定上紺と同系色の響きのある名前でイメージを統一する必要があったからです (2020年7月12日 8時) (レス) id: aad2ad7f17 (このIDを非表示/違反報告)
たんぱく質(プロフ) - なっちんさん» 1つ目は、物語の雰囲気を優先したからです。薄々とは感じて頂いていると思いますが、この3人の関係にはウェイトを置いていて書いております。その為、名前というキャラクター構成の要となる部分が不確定だと、物語を引き締められないと判断し、使用しない事にしたのです (2020年7月12日 8時) (レス) id: aad2ad7f17 (このIDを非表示/違反報告)
たんぱく質(プロフ) - なっちんさん» コメントありがとうございます。名前の変更はコレを書くと決めた時に、熟考を重ね、しないと決めたので、大変申し訳ないのですが致しかねます。長文になりますが、名前変更をしなかった理由は2つあります。 (2020年7月12日 8時) (レス) id: aad2ad7f17 (このIDを非表示/違反報告)
なっちん(プロフ) - 初めまして^^*お話とても好きです∩ω<`あの名前の変換はできないのでしょうか(;o;)?? (2020年7月12日 7時) (携帯から) (レス) id: 86e7fd8910 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:たんぱく質 | 作成日時:2020年7月8日 21時

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