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紺炉の部屋から玄関まで続く廊下を行く。
ふと、視線を上げれば葵の部屋の襖が少し空いていることに気づく。
多少気が引けたが、中を覗けば
うつ伏せで寝息を立てる葵。

なんつぅ、寝方してんだ…


「そんな寝方で苦しくねぇのか」


襖を開け葵の背中にかけた言葉は
やはり、独り言になる。
敷居を跨いだところで、紅丸は足を止めた。


畳2枚分。
1間が俺と葵の距離

手を伸ばせば届くかもしれない。
近くて遠い距離。


この距離は、アイツが今の俺に許した境界。


睡眠とは、最も無防備になる瞬間の1つである。
故に、生き物は安心できる場所でしか眠らないのだ。


葵は人前では寝ない。
寝るとしたら、紺炉の前だけだ。

どこまで行っても紺炉の影が付いて回る。
それを煩わしいと思った事もあった。
紺炉がいなければと、考える日も何度か経験した。
しかし、その影がなければ葵は浅草には帰ってこなかった。


それが、どうしよもなく悔しい


「紺炉が、お前と腹割って話せって」


返事は無論返ってこない。
膝を折って、白い顔を見下ろした。
顔にかかる髪を払おうと手を伸ばしたが、直ぐに引っ込める。



腹を括れ


逃げるな


向き合え



言うのは簡単だ


でも、実際そうなったら








きっと、逃げ出したくなる







大事にしたい気持ちは本当で









それと同じくらい怖い






これ以上変わっていく事が





「上手くいかないもんだな…」



何方に向けて吐いたか分からない言葉が、消えていく。
もう1度葵に視線を落とす。
知らない大人の顔に、不安が募っていく気がする。
紅丸は第8と話をするため腰を上げ、部屋を後にした。

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たんぱく質(プロフ) - なーちゃんさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけるだけで、励みになります。できるだけ早くお届けできるよう頑張っていきます。 (2020年6月3日 21時) (レス) id: aad2ad7f17 (このIDを非表示/違反報告)
なーちゃん - 紅丸大隊長、大好きなんです!書いてくれてありがとうございます!続き待ってます! (2020年6月2日 8時) (レス) id: 7840b2b58c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:たんぱく質 | 作成日時:2020年5月24日 19時

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