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『マキ』

「えっ!さっ…しゃが、相模屋大尉⁉」


背後から呼ばれ、驚きのあまり噛んでしまう。
その拍子に、給水タンクがドスンと音を立て、地面にめり込んだ。
マキはゴリラサイコロプスな所を見られてた事や、
名前を呼ばれた事、噛んでしまった事で、色々とパニックになる。


「今の見てました?」


恐る恐る首だけで振り向く。


『いや。マキが重たいものを持ち上げる勇姿なんて見てないぞ?」

「しっかりと見てるじゃないですか⁉」

『あはは。でも、マキの成長が見て分かるから、私は嬉しい』

「私は嫌です…。大尉にはこんなゴリラで可愛くない所見られたくなかったです」

『ゴリラ?何を言っているのか分からないが、マキはいつも可愛いじゃないか?』



久々すぎて、忘れていたこの感覚…

マキは高鳴る胸を必死で抑え
平静を繕って向き直った。


「で、どうしたんですか大尉?」

『そうだ、その大尉だ』

「?」

『私達は、お互いに軍を辞めただろ?だから、私の事は葵と呼んで欲しいんだ』

「え!?それは恐れ多いです」


つい早口で返答してしまう。


『私が良いと言っているんだ。何を躊躇うんだ?』

「相模屋たい…小隊長は、凄い方です。私の憧れでもあります。そのような方を急に名前で呼ぶなんて…」

『そうか……。まぁ、無理強いはしないから』


眉を下げ、落ち込んだ表情を隠すように笑って見せる葵。
罪悪感がのしかかる。
用件は済んだと、去っていく葵の背中を掴んだ。
その拍子に、着物の襟が首に入る。


『うぐっ…』

「あっ、すみません‼」

『良いんだ、気にしなくも』

「……」

『………マキ?』


葵は首を擦りながら、俯いたマキを下から覗きこむ。
意を決したマキ。


「葵さん!」

『な、何?』

「葵さん。葵小隊長。相模屋大尉‼」

『おっ…、おう?どうした』


顔を上げた先で、視線がかち合う。


「私、平気です‼葵さんって呼ぶのも、
相模屋大尉って呼ぶのも、全部同じ気持ちです。
だから、葵さんって呼びます‼」


ここまで一呼吸で言い切るマキ。
初めは唖然としていた葵だったが、突然笑い出す。

私、何か変な事言ったかな?

一頻り笑った葵は、涙を拭ってマキに向き直った。


『あー、久々に笑った』

「本当、笑いすぎですよ…」

『すまん。マキが真っ直ぐな子だったから、つい』

「それ、褒めてます?」

『褒めてるよ。私は良い後輩を持てた、果報者だ』


手の甲で頬を撫でる葵。
ここまで耐えた、マキの心臓がついに爆発した。

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たんぱく質(プロフ) - なーちゃんさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけるだけで、励みになります。できるだけ早くお届けできるよう頑張っていきます。 (2020年6月3日 21時) (レス) id: aad2ad7f17 (このIDを非表示/違反報告)
なーちゃん - 紅丸大隊長、大好きなんです!書いてくれてありがとうございます!続き待ってます! (2020年6月2日 8時) (レス) id: 7840b2b58c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:たんぱく質 | 作成日時:2020年5月24日 19時

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