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進展確認のため現場に来た葵は、目を丸くした。
第8が修復作業の手伝いをしているのだ。
壬生を通して町全体を見ているので
ある程度は把握しているのだが、百聞は一見に如かず。

私も人の事は、言えないな…

1人苦笑いを溢す。

通りの向こうの屋根で鳶が呼ぶ。
下に降りるのも面倒なのでそのまま飛び移ろうと、瓦を蹴った。
身体が完全に空中に投げ出されたとき、右の方から飛んで来る影に気づく。

が、時すでに遅し。

空を舞う木材。
落下する人影。
下には、修復作業をする部下たち


このままでは大事故になる


葵は、落ちていく中で咄嗟に手を翳した。
すると、何処からともなく風が巻き起こり、木材がふわふわと宙を漂う。
葵は空中で体をひねり、難なく着地をする。

浅草で空が飛べるのは1人しかいない。
こんな低い高度で飛ぶな、と怒ってやろうと口を開く。


「大丈夫ですか⁉」


が、この時点で違う。
慌てて、言葉を飲み込む。
声のする方を見れば
足から炎を出して飛んでいる知らない子。

まだ、声を発していなくて本当に助かった。
早とちりで身内じゃない人間。
しかも、子供相手に怒鳴なんて末代までの恥だ。
短く切りそろえられた黒髪の子は
少し離れた所に降りて、こちらに駆け寄ってくる。
先程、若に喧嘩を吹っ掛けた子だ。


『私は平気だ。そちらこそ怪我はしていないかい?』

「自分は大丈夫です」

『それは良かった。えっと、君は…?』

「しん…、日下部 森羅 二等消防官です。先程はお見苦しい所を…」


わざわざ原国式の呼び方に改めて名乗る森羅。
そう言った配慮ができる、優しい子なのだと思う。

ウチのバカも見習って欲しいものだ


『構わんよ。あれは、いつもあんな感じなんだ。悪気はないとは思うが…』


ここには居ない紅丸の事を考え、遠くを見た。
しかし、直ぐに目の前の森羅に戻る。


『そう言えば、名乗るのが遅くなってしまったね。私は、相模屋 葵だ。第7の小隊長務めている。修復作業で何か分からないことがあれば、聞いてくれ』

「わかりました、相模屋小隊長」

『葵でいいよ。ウチにはもう1人、相模屋が居るんだ。
その呼び方だと、もう1人も反応してしまう』

「えっ。でも、火縄中隊長とマキさんが相模屋小隊長の事は…」

『また、あの2人は…。
後で、2人にも葵で良いと伝えておくよ』


葵が上を見て手招きをすれば、
バラバラで宙に浮いていた木材たちが
整えられた状態で降りてくるので、森羅に差し出した。

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たんぱく質(プロフ) - なーちゃんさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけるだけで、励みになります。できるだけ早くお届けできるよう頑張っていきます。 (2020年6月3日 21時) (レス) id: aad2ad7f17 (このIDを非表示/違反報告)
なーちゃん - 紅丸大隊長、大好きなんです!書いてくれてありがとうございます!続き待ってます! (2020年6月2日 8時) (レス) id: 7840b2b58c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:たんぱく質 | 作成日時:2020年5月24日 19時

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