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浅草の某居酒屋。
死屍累々の中、一人酒を嗜む葵。
酒豪で飲むペースが速い葵。
その為、こういった場は大体こうなる。


『おじさん、お勘定お願い』


最後の焼酎を飲み干し、泥酔者を残して席を立つ。
このまま残っていても介抱する羽目になるだけなので、
いつも早々に切り上げるのだ。
居酒屋の暖簾をくぐると、夜風が頬を撫でる。


今日は満月か

葵は夜空を見上げた。
黒い空に、銀紙をくり抜いたような望月。


『いい月…』


詰所に戻ったら、また月見酒でもしよう


葵は、笑みを溢し壬生を出す。
そして、詰所まで案内させた。
しばらく行くと突然壬生は止まり、葵の背後に唸り声をあげる。


「また会ったな、お嬢ちゃん」


振り返れば、隻眼の長髪男。
男は煙草を咥えた口で不敵に笑う。


『何処かでお会いしましたか?』

「おいおい。つれねぇな」

『生憎、長髪の知り合いはいないので』


と、刀で切りかかる。
ひらりと躱し、距離をとる男。


「いいねぇ、その目。餓えた狼の目だ」

『何方か存じませんが、浅草(ここ)から早急に出て行っていただけます?
できれば、私も平和に解決したいので』

「お嬢ちゃんがそれを言うのか?
あんな惨い事、顔色一つ変えないでやれるのに」


と、せせら笑う男。

コイツ、あの夜の…

一気に空気がピリつき、肌を刺していく。


『でしたら、貴方はここで始末します』

「いいねぇ。やっぱ、そう来なくちゃ」

『ベラベラとよく回る口だ』


葵は男の口目掛けて刀を振る。
今度は左手の炎のカードに受け取められる。
右から拳が飛んできたので、刀の纏う炎で爆発を起こし後方に飛ぶ。


『篠突く雨…』


まだ黒煙の上がる男の頭上に顕現した刀が、雨のように降り注ぐ。
男はそれを意に介さず、距離を詰めてくるので応戦する。

どれも決め手に欠ける攻撃がしばらく続いた。


遊ばれてる…

葵はもう一度後ろに跳躍する。
刀を鞘に収め、腰を落とす。
息を整え、周囲の熱を吸収する。
男は煙草を吐き捨て、新しいのを咥える。


『居合抜刀術:絶』


踏み込んだ際熱を放出し、男の動きを一瞬止める。
神速の居合で斬撃の渦を起こし、男の周囲を切り刻む。
が、手ごたえがない。


また遊ぼうぜ、狼の嬢ちゃん…


煙が宵闇に混ざって消えていく。
そして、空から1枚カードがひらひらと落ちて来たので、拾い上げた。


ペテン師(ジョーカー)ね…』


食えない男だと、つくづく思う。
葵は、カードを灰にして、帰路を辿った。

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たんぱく質(プロフ) - なーちゃんさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけるだけで、励みになります。できるだけ早くお届けできるよう頑張っていきます。 (2020年6月3日 21時) (レス) id: aad2ad7f17 (このIDを非表示/違反報告)
なーちゃん - 紅丸大隊長、大好きなんです!書いてくれてありがとうございます!続き待ってます! (2020年6月2日 8時) (レス) id: 7840b2b58c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:たんぱく質 | 作成日時:2020年5月24日 19時

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