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人の営みが完全に停止する真夜中。
噎せ返る熱気と、生き物の焼ける臭いだけが立ち込める某所。
日中の装いとは打って変わり、漆黒に身を包む葵。
冷ややかな目で、地面に転がる躯体を見下ろす。

今回は5人か…


浅草以外の世界を知る葵。
当然、原国主義をよく思わない連中もいる。
そういった輩が浅草に入らないように、企てを起こさないように悪い芽を摘むのが、葵の仕事。
その為、大量の壬生狼を浅草中に放ち、常に監視しているのだ。


誰にも知られず、誰にも理解されない仕事。


昔の仕事と何も変わっていないなと、自嘲の笑いを溢す。



全ての標的の沈黙を確認し、踵を返そうとした時
背後から、葵の首目掛け何かが飛んでくる。
刹那、火柱が葵の背後に立つ。
ゆっくりと腰を持ち上げ、飛んできた方向に目を向ける。


しかし、気配は既に消え去ってしまう。


葵はゆったりとした足取りで、飛んできた方向に進む。
コツコツと踵が地面を鳴らし、止まる。
そこには、地面から突き立つ無数の槍に、貫かれる男。
槍の1つが男の喉を突き刺し、何かを宣う口からは血しか出てこない。
葵は周りを見渡し、再度男に目をやる。
そして、指を1つ弾き、すべてを灰に返す。


『逃がしたか…』


天を仰いで吐いた独り言が、死臭に混ざる。


昔なら確実に仕留められたのに…

深いため息を吐き、自分の腕が衰えている事に怒りを覚える。
そして、暗闇を睨み、冷たく吐き捨てた。


『見つけ出して、殺せ…』


闇の中炎の獣たちが揺らめき、葵の隣を一斉に走り抜けていった。




―――――――――――――――――



皓々と照る明月。
浅草から少し離れたビルの屋上に影が一つ。



「ハッ。久々に浅草に行ってみれば、面白いのがいるじゃねぇの」



頬を伝う血を拭いながら、男は笑った。

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たんぱく質(プロフ) - なーちゃんさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけるだけで、励みになります。できるだけ早くお届けできるよう頑張っていきます。 (2020年6月3日 21時) (レス) id: aad2ad7f17 (このIDを非表示/違反報告)
なーちゃん - 紅丸大隊長、大好きなんです!書いてくれてありがとうございます!続き待ってます! (2020年6月2日 8時) (レス) id: 7840b2b58c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:たんぱく質 | 作成日時:2020年5月24日 19時

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